海外のメディアは、被災者の我慢強い忍耐力を絶賛した。その一方で、日本に存在する無数の「規制」に注目した。救援物資を現地に搬入しようにも搬入できなかった。海外メディアは当初、道路等のインフラが破壊されたから搬入できないと理解し同情した。だが時が経つにつれ、石油の備蓄を義務付ける規則がガソリンの供給を妨げていると知って認識は一変した。

 この国には石油元売り業者に年間70日分の石油備蓄を義務付ける法律がある。業者がこれを下回る場合には、経済産業省に申請してその許可を受けなければならない。許可を得ないで勝手に備蓄限度を下回ると罰則が課される。

 今回の震災では被災地近隣の多くの人が、家族の捜索や被災者救援のためにガソリンを求めてガソリンスタンドに並んだ。スタンドの在庫はあっという間に底をついた。被災後4日目にはガソリンスタンドに何時間並んでも手に入らなかった。公共交通手段が復旧しないなかで、生活必需品を手に入れるためには、車を走らせて入手するしかなかったからだ。

 こうした状況に対応して経済産業省は震災の4日後に、備蓄限度を70日分から67日分に引き下げることに決め、業者からの申請なし・罰則なしで認めることにした。この引き下げは民間業者が保有する備蓄分に対して行われた。このほかに国家が保有する備蓄分があるが、放出手続きに時間がかかるという理由で見送られた。だが民間保有分の放出は短期間に機能せず、ガソリンの不足状況は一向に改善しなかった。

 そこで経産省は3月21日に67日分を45日分に引き下げる追加措置を発表した。震災発生から10日間も経っていた。備蓄は何のためにあるのだ。こういう非常時にこそ備蓄のガソリンを早く放出していれば、被災地域の人々が協力して多くの人命を救出できたのではないか。被災者に多くの支援物資を届けられたのではないか。

 更に良くなかったのは、国が認める被害者支援車両に優先的にガソリンを回したことだ。それによって一般市民へのガソリン供給がさらに遅れた。経産省の初動動作が遅れたために、被災地では暖も取れなかった。