そもそも日本人に投資は向いていないのか? だが、日本の個人投資家は極めて賢い存在だと松本さんは言う。

 「日本の個人投資家にリスクが取れるのか、とよく外国の人に聞かれます。でも、日本の個人ほど自国通貨以外の資産を直接持っている国民というのは、実は僕は知らないんです。また、史上初の先物は、堂島の米市場の商品だったと言われています。これが、シカゴの先物取引所の展望ルームにある、先物の歴史にも書いてあるんです」

 しかも実際、かつて日本の個人投資家は、驚くべきその才覚を発揮していたという。

 「日本の個人投資家は、投資が下手だとか、投資のことをよく知らないと言われることがありますね。でも、実際にはそうではないんです。たとえば、日本の不動産バブルが起きたとき、個人の総体である家計はバブルのピークで不動産を売り越しているんです。もちろん、一部ではピークで買った人もいる。でも、全体では違うんですね。世界では、歴史上さまざまな国でバブルが起きました。そのすべてにおいて、家計はピークでバブル資産を買い越しているんです。ところが日本人だけが、バブルの頂点で資産を売り越した。買ったのは、銀行でした」

 そして売ったお金を個人はどうしたのかといえば、預貯金に向かわせたのである。その後、株式相場は下落、円高となり、外貨が安く買えるようになって、金利が下がることで預貯金の価値は上がった。家計は見事にバブルを切り抜け、しかもその後もベストの選択をした、ということである。

 「結果から見ると、最もいいタイミングで日本の個人は不動産からお金を移しているんです。損をしたのは、銀行をはじめとする機関投資家でした。これでどうして、日本の個人投資家が投資下手だとか、投資を知らないとか言えるでしょうか。日本の個人は、マクロ的に見ると、極めて投資上手だったんです」

 では、なぜ個人投資家があまり株を買わないのかといえば、そこには理由がある。