[アムステルダム 13日 ロイター] - オランダ議会下院選挙がいよいよ15日に実施される。前週末の出来事をきっかけにトルコとの対立が激化したことで、もともと最大の争点だった移民問題とナショナリズムがさらに注目を浴びている。

オランダ政府は、トルコの閣僚が改憲の是非を問う国民投票支持をオランダ在住トルコ人に呼びかけるために入国しようとしたのを拒否。これに抗議するため集まったトルコ人とオランダ警察が衝突し、トルコのエルドアン大統領はオランダ側を「ファシスト」とののしる事態になった。反イスラムを掲げる極右政党、自由党(PVV)のウィルダース党首は、こうした情勢が選挙で第一党に躍進する上で追い風に働くと期待している。

オランダでは小党が割拠し、どの政党もPVVとの連立を否定している状況を踏まえると、PVVが政権を樹立できる可能性は実質的にはゼロだ。それでもPVVが第一党になれば、欧州全土に衝撃が広がるだろう。

フランスでは来月、大統領選の第一回投票が行われ、極右の国民戦線を率いるマリーヌ・ルペン氏が13日の世論調査でリードしている。9月のドイツ総選挙では、やはり右派で欧州連合(EU)に懐疑的な「ドイツのための選択肢(AfD)」が初めて連邦議会に議席を得る公算が大きい。

より目先の問題は、トルコとオランダの対立が本当にウィルダース氏に有利に働くのか、それともルッテ首相の得点になるのかだ。

13日夜に発表された世論調査では、ルッテ氏の自由民主党(VVD)が獲得予想議席がこれまでより3議席、ウィルダース氏のPVVは2議席増える見通しになった。

オランダ紙トロウの政治論説委員、ハンス・ゴスリンク氏は「トルコとの対立といったような問題に国家が見舞われている際には、国民は政府を支持する傾向がある」と指摘した。

ルッテ氏のトルコに対する強硬姿勢は、主流政党が移民問題に適切に対応するとの姿勢を示し、ウィルダース氏に投票しないよう有権者にアピールしているとの受け止め方が多い。VVDと連立を組むキリスト教民主勢力(CDA)も12日、トルコからの移民に対して二重国籍の破棄とオランダへの同化を促した。

またルッテ氏とウィルダース氏は13日夜に1対1の討論会を開き、主に移民流入阻止の方法を巡って火花を散らした。

ルッテ氏は、ウィルダース氏が提唱する国境とモスクの封鎖、コーラン禁止を「偽物の解決策」とこきおろし、「われわれが難民危機の原因に焦点を当てているのに、あなたはコーランの取り締まりに全力を注ぐという無駄な努力をしている」と語った。

一方でウィルダース氏は、ルッテ氏がオランダ人より新たな入国者により手厚い福祉を提供していると批判。「われわれは、難民申請を求める人のためではなく、オランダ人自身やその両親のためになる候補を選ぶ必要がある。あなたはオランダ人ではなく外国人を代表する首相だ」と論じた。

ロイターの最新調査では、VVDの支持率が16.2%と最も高く、PVVが13.4%、CDAは12.5%で上昇傾向にある。

上位4党の支持率が接近していてどの党も第1党になり得るが、連立政権を立ち上げるには他の3党に協力を仰がなければならない。

アムステルダム大学のRens Vliegenthart教授は「新政権が一筋縄でいきそうにないことは既に分かっている」と述べ、長期にわたる協議の末にVVDとCDAが主導し、民主66と恐らくは初めてグリーン・レフトが参加する形の中道右派政権が誕生すると予想した。

ただしトルコとの対立激化で世論調査の見通しは当てにならなくなる、と専門家は警告する。ライデン大学のJoop van Holsteijn教授は、移民と国の一体性、対トルコ関係が突如として非常に目立つ問題となり、ウィルダース氏がそうした情勢の恩恵を最も受ける可能性が依然としてある、と分析した。

(Toby Sterling記者)