東日本大震災や福島原発事故への対応で菅直人首相がリーダーシップを発揮していないという批判が高まっています。共同通信社が実施した電話世論調査によると、菅首相がリーダーシップを「発揮していない」と感じている人は76%。この数値は震災から時間が経過するにつれて上昇しています。もはや多くの人が「頼りにならない」と感じていると言い切ってよいかもしれません。

 ただ、気になることがあります。それはリーダーシップを担うのはトップ(職場なら上司)だけでよいのか、ということです。もしトップだけだと考えているとしたら、それは大きな勘違いです。本来は各々が与えられた立場で発揮すべき“リーダーシップ”があるはず。危機的状況になればなるほど、その役割の重要性は高くなります。しかし、実際にその役割を果たせている人は少ないのではないでしょうか。

 そこで今回は、リーダーシップが欠如しているある若手社員を例に、誰もが本来発揮すべきリーダーシップとはどのようなものか、考えていきましょう。

自己評価は「一人前」にも関わらず、
先輩からの評価は「半人前」!?

 ある専門商社の営業部に勤務するDさん(27歳)は入社5年目。商品知識も豊富になり、周囲にサポートしてもらう機会がめっきり減ってきました。そのため最近では、担当するお客様を自分1人だけで訪問しています。

「入社当時は職場に馴染めなくて、何回も辞めようと思いました。でも、現在は仕事を通じて成長を実感しています」

 こんなDさんの言葉からも、やりがいを感じて毎日を充実して過ごしているのがよく伝わってきます。

 このように本人は独り立ちが出来たと確信しており、社会人として1つの壁を越えたのは間違いありません。

 ところが話をすすめていくと、Dさんの表情がやや曇ってきました。

「仕事に慣れてくると刺激が足りない気がしてなりません。第一、職場に尊敬できるリーダー的な存在が見当たらないのです」

 どうやら自分の仕事ぶりに余裕ができたと同時に、周囲に対して不満を募らせる状態の様子。俗にいう「行動の規範となる存在=ロールモデル」が見つからないことで目標を見失いかけています。