政府の「大本営発表」を聞いて、すべての情報が公開されていると考える人は、いまやほとんどいないでしょう。けれども、政府や東京電力がどこまで真実を把握していて、どのような情報を隠しているのかは、誰もわかりません。

 今回は、改めてツイッターが注目されましたが、そこでもさまざまな情報がまことしやかに流布しています。原子力の専門家の発言を並べてみても、その内容もまちまちです。その情報のうちどれが正しいもので、どの情報に拠り所を置いていいのかがわからないのです。

 この点について、多くの知識人はこう言います。

「自分で情報を取捨選択して、自分なりの理解を形成しなさい」

 しかし、高度な専門知識を初めて聞き、そのうえ、人によって言っていることが違っていれば、戸惑うのも無理はありません。私たちは、そこまでメディア・リテラシーが高いわけではないのです。現段階では、より正確な情報を見極めることができないことが、人々の大きなストレスになっています。

白黒はっきりさせようというこころが、
かえってダメージを大きくしている

 現代の日本社会は、物事の白黒をすぐにつけたがる傾向にあります。

 だいぶ前のことですが、田中真紀子さんが次の総理大臣にふさわしいという世論が形成された時期がありました。小泉首相のもと外務大臣になった田中さんは、鈴木宗男元議員との確執などで外務大臣を罷免されます。そのときは、小泉首相の支持率が急落するほど田中さんの人気は絶大なものでした。

 しかし、秘書給与横領というスキャンダルが発覚すると、メディアは手の平を返したようにバッシングに走りました。すると、あれだけ持ち上げていた国民も、やっぱりあの人は信用ならないとそっぽを向いてしまったのです。

 日本中の期待を集めて政権を奪取した民主党も、鳩山さんの支持率は一気に落としてしまいます。そうかと思えば、菅総理に変わったとたん、何の仕事もしていない段階にもかかわらず支持率が急上昇するという現象が起こりました。

 サッカー日本代表「岡田ジャパン」も、ワールドカップに入る直前までは酷評されていて、大会直前にもかかわらず、早く辞めろとまで言われていました。しかし、ワールドカップの初戦カメルーン戦に勝利すると、岡田さんは「名将」に変わりました。あまりにも急激に評価が変わってしまうことに、戸惑った記憶があります。