気を取り直して、私は出席者に語りかけた。まず確認すべきは、何を目標として掲げるかだ。「皆さんは地元レベルのヒットで良しとしますか? 全国レベルのヒットを目指しますか?」

 というのも、さぬきでは、東京や大阪で話題のものが売れる傾向にあったからだ。地元では二番煎じで通用するかもしれないが、全国レベルを狙うなら、発想をガラっと変え、知恵を絞り抜く必要がある。その覚悟があるかどうか、本気で全国を目指すかどうかを、自らの意思で選んでほしかったのだ。

 グループ討議を行ってもらった結果、多数決で全国を目指すことに決まった。ならば、他の地方にはない、さぬきならではの特徴を考える必要がある。土産菓子のコンセプトに反映させるためだ。

ぶどう、桃……確かに特産品だが、全国的な知名度はない

 商工会が国に提出した予算申請書では、四国霊場八十八ヵ所の最後の三つ、上がり三ヵ寺をさぬきの特徴として打ち出していた。しかし、だからといって、結論ありきで始めるつもりはなかった。自分たちで考え、納得してからの方が、主体的に取り組めると思ったからだ。

 議論を始めてもらうと、次々と意見が上がった。「さぬきワインの原料のぶどうはどうか」「桃がとれる」「自然薯もあるよ」「竹林が多いので竹炭は?」……。

 いずれも特産品ではあるが、ぶどうにせよ桃にせよ、山梨や長野などの名産地には遠く及ばない。残念ながら、全国的な知名度はないに等しかった。

 すると突然、「さぬき特産の小麦、さぬきの夢2000を入れなければ、こんなプロジェクトはやっても意味がない!」と市の幹部が言い放った。会議室の空気が凍る。威圧的な物言いは、昔ながらの“お役人”をほうふつとさせた。地方には未だにこの手の人がいるのか、と驚いた。

 長い沈黙の後、ふと誰かが、「平賀源内はどうでしょう……」と言い出した。「そうだそうだ」と賛同の声が続く。たしかに平賀源内は、歴史の教科書にも登場する発明家である。

 とはいえ、高知県の坂本龍馬ほどのインパクトはない。全国的に見れば、お遍路の知名度には及ばない、と感じた。

 時計を見ると、終わりの時間が近づいていた。もっとじっくり議論したいが、そろそろまとめに入らなければならない。私は賛同者がいてくれることを祈って、語りかけた。