太元公使が核施設などへの先制攻撃に言及しなかったのは、最初の一撃ですべてを破壊できるはずがなく、それが反撃を生み大変危険だからであろう。しかし、米国や韓国が政権の転覆をはかることも非常に危険である。だとすれば、まず中国をどう使うか、北朝鮮のエリートの中の不満分子をいかに手なずけるか、を考えるのが順当であろう。

 前述の太元公使は「中国が金正恩政権を崩壊させようとすれば2、3年もかからない。北朝鮮とあらゆる貿易を中止し、中朝国境を封鎖すればいい」。ただ、「中国にとって北朝鮮は緩衝地帯で、核を奪うより政権の安定の保証が一番の関心事だ」と述べている。

 中国が北朝鮮の経済制裁に真剣に協力していたならば、この問題は既に解決していたかもしれない。しかし今となっては、北朝鮮の核ミサイル開発は待ったなしの状況であり、2、3年は待てないのではないか。米国も北朝鮮の核ミサイル開発を放棄させるためには、すべての選択肢を用意する必要があるとの見方に傾いているようである。ティラーソン国務長官も21日、中国の楊潔〓(=竹かんむりの下に厂、虎)国務委員との電話会談で、中国に対しあらゆる手段を使って挑発を抑制するよう要請しているそうである。

 それに対して中国は、王毅外相が全人代の場で記者会見し、北朝鮮には挑発行為の停止を、米韓には軍事演習などの強硬策をやめるよう提案した。中国は北朝鮮の挑発行為によって、日米韓の結束が固まり、在韓米軍にTHAADが配備されるなど、外交的に極めて不都合な状況が生じており、北朝鮮の核ミサイル開発は思いとどまらせたいに決まっている。他方、日米韓の圧力で北朝鮮を崩壊させたくないのである。王毅外相は自分たちにとって都合のいいことを言っているに過ぎない。

 ただ、トランプ政権になって、このままではもたないとの雰囲気になっているように思える。中国は、「テロ支援国家」再指定の検討など米国の強い姿勢に裏打ちされた要請に答え、暴走を続ける北朝鮮の抑制に動き始めた。中国が北朝鮮からの石炭の輸入を年内いっぱい停止しことや、3月4日、訪中した北朝鮮の李吉聖外務次官に自制を要求したことなどはこれを反映したものであろう。

 しかし、これは始まりに過ぎない。中国をさらに動かし、北朝鮮政権の交代を促すためには、中国の緩衝地帯がなくなるとの懸念に、いかに答えるかが課題であろう。そのため、中国とより現実的な対話を行っていくべきときに来ているのではないか。ティラーソン国務長官の中国訪問はその手始めかもしれない。