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ソーシャル グローバルトレンド
2017年3月21日
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武邑光裕 [クオン株式会社 取締役 兼 ベルリン支局長]

Nikkei(日系)料理の躍進と消え行く和食、グローバル化の中での日本の行方

世界100ヵ国以上で愛用され、海外に7つの生産拠点を持つKikkoman醤油。日本シェア30%、世界シェア50%を占める

今、寿司やラーメンは日本人の占有物ではありません。フランスもイタリアも自国の食や文化が自分たちだけのものだとは考えません。むしろ世界に越境し飛躍をとげる文化は、多彩な経済活動を自国に呼び込みます。世界がマッシュアップし、進化を続けるNikkei (日系)料理を通して、日本企業の海外進出への課題について考えます。

世界の日本食の典型となったNikkei(日系)料理

 世界各地で日本食が支持され、海外の日本食レストランは2006年の2.4万店から2015年には8.9万店へと増え続けています(*1)。世界の5大陸、28の都市に32店舗、年間200万人が来店するレストラン・グループNOBU(*2)の成功をはじめ、この20年間で日本をルーツとする食市場は高級化と大衆化双方で拡大し続け、世界の人々が家庭で日本食を作る時代をむかえています。

 NOBUのオーナーシェフである松久信幸氏は、若くして東京の寿司店で修行を積んでから海外に渡り、ペルー、アルゼンチン、米国各地に拠点を移し、日本食の多彩な料理や技術を基本に、南米や欧米料理の要素を取り入れた独自のスタイルで国際的な評価を受けてきました。NOBUが開拓した和と世界各地の料理とのフュージョンは、現在、世界が認める日本食の典型にまでなっています。

 松久氏はペルーの日系人料理のパイオニアでもあり、後にスペインの伝説的レストランとなった「エル・ブジ」のシェフ、ファラン・アドリア氏にも影響を与えたと言われています。彼と弟のアルベルト・アドリア氏は現在バルセロナで6つのレストランを経営していますが、2012年にオープンした「パクタ(PAKTA)」のメインコンセプトは、「日系ペルー料理」というもので、世界が最も注目する料理のひとつです(*3)。現在、日本から越境し進化する“Nikkei Culinary”(日系料理)は、世界各地に拡張しています。

 Nikkei (日系)という用語は、もともと日本人をルーツとする海外移民とその子孫を意味していました。ペルーは1873年に日本と外交関係を結んだ最初の南米の国であり、初期の日本人移民を受け入れた土地です。今やNikkeiは、日本を起源とし、日本国外で作られるすべての日本料理を示す言葉とさえなっています。

*1 「農林水産物・食品の輸出の現状」農林水産省(平成28年2月)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/nousui/kyouka_wg/dai1/siryou6-1.pdf
*2 レストランチェーンをはじめ、近年では食と住の一体的な「NOBU Hospitality」が5大陸に広がる9つのラグジュアリー・ホテルとして有名。NOBUは米国の俳優ロバート・デ・ニーロが出資、経営にも携わっている。
*3 PAKTAの店内、料理は以下のビデオを参照。https://www.youtube.com/watch?v=QGi-hc66qAw



武邑光裕(たけむら・みつひろ)[クオン株式会社 取締役 兼 ベルリン支局長]

メディア美学者。武邑塾主幹。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学情報デザイン科、同大メディア美学研究センター所長、東京大学大学院新領域創成科学研究科、札幌市立大学デザイン学部(メディアデザイン)で教授職を歴任。2015年より現職。専門はメディア美学、デジタル・アーカイヴ情報学、創造産業論、ソーシャルメディアデザイン。著書『記憶のゆくたて デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。2015年よりクオン株式会社ベルリン支局長。2016年、取締役就任。


ソーシャル グローバルトレンド

ヨーロッパ各国から様々なクリエイターやテクノロジストが集まる街、ドイツ・ベルリン。この街を訪れると、自ずとソーシャルビジネスのグローバルトレンドを垣間見ることができます。本連載では、ベルリンに在住する著者が現地で見た、ソーシャルビジネスの最前線を紹介します。

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