経営×ソーシャル
ソーシャル グローバルトレンド
2017年3月21日
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武邑光裕 [クオン株式会社 取締役 兼 ベルリン支局長]

Nikkei(日系)料理の躍進と消え行く和食、グローバル化の中での日本の行方

グローバル化する日本×クールジャパンの再考

Mark McLellandによる論考集『クールジャパンの終焉:日本の大衆文化への倫理的・法的・文化的挑戦』は多々あるクールジャパン批評の最新版

 2015年の外務省「海外在留邦人数調査統計」によれば、日本国外に在留する邦人(日本人)の総数は過去最高の131.7万人で、前年より2.6万人強(約2.1%)の増加です。訪日外客数も増加し続けており、2015年には45年ぶりにアウトバウンドをインバウンドが上回り、2016年には年間2400万人を突破しました。日本政府は2020年に4000万人の訪日外客数を目標に掲げています。

 この十数年、日本のソフトパワーは「クールジャパン(*4)」と自賛されてきました。それは、アニメ、マンガといったサブカルチャーから日本の伝統文化に至るまでを世界に喧伝する国の政策です。しかし、世界の若者たちにとって「クール」が「イカす」のは、既成の価値観を刷新する自在な創造性でした。

 文化は越境し変化するもので、日本の知的財産の主導権を狙うクールジャパン政策に、世界中から反発の声もあがりました。世界各地で日本のサブカルチャーに魅了された若者たちにとっての「クール」とは、二次創作や改変の自在な気風にあったとも言えます。これが海外におけるNikkei料理の急成長とも重なる点なのです。

wagamamaの「鉄板焼きそば」。日本の屋台の味+グローバルなアレンジ。もちろん、「紅しょうが」は必須 ©wagamama

 世界各地の料理を改変してきた「クール」な日本食に触発されたレストラン事業家アラン・ヤウ(Alan Yau)氏によって、1992年、ロンドンのブルームズベリーにwagamamaが創業します。現在、英国のデュークストリート・キャピタルがオーナーで、世界17ヵ国に130以上のチェーン店を展開し、1億9300万ポンド(約271億8300万円)を売り上げる「日本風レストラン」です(*5)。日本の大学食堂のような店内では、日本風の焼きそば、ラーメン、チキンカツカレー、ドンブリの他、アジアン・メニューも人気です。

*4 イギリスのブレア政権が推進した国家ブランド戦略「クール・ブリタニア」に触発されたスローガン。日本のポップ・カルチャーから、日本製品、食、伝統文化なども対外輸出の振興対象とする経済産業省の事業。クールジャパン商材に関する最新のコンセプトブックに『世界が驚くニッポン』がある。http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170308001/20170308001-1.pdf
*5 英国のカジュアルダイニング・アワード2017で、wagamamaはMultiple Casual Dining Restaurant of the YearとwagamamaのCEO、デビッド・キャンベル氏がトレイルブレイザー(先駆者)賞を受賞した。



武邑光裕(たけむら・みつひろ)[クオン株式会社 取締役 兼 ベルリン支局長]

メディア美学者。武邑塾主幹。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学情報デザイン科、同大メディア美学研究センター所長、東京大学大学院新領域創成科学研究科、札幌市立大学デザイン学部(メディアデザイン)で教授職を歴任。2015年より現職。専門はメディア美学、デジタル・アーカイヴ情報学、創造産業論、ソーシャルメディアデザイン。著書『記憶のゆくたて デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。2015年よりクオン株式会社ベルリン支局長。2016年、取締役就任。


ソーシャル グローバルトレンド

ヨーロッパ各国から様々なクリエイターやテクノロジストが集まる街、ドイツ・ベルリン。この街を訪れると、自ずとソーシャルビジネスのグローバルトレンドを垣間見ることができます。本連載では、ベルリンに在住する著者が現地で見た、ソーシャルビジネスの最前線を紹介します。

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