経営×ソーシャル
ソーシャル グローバルトレンド
2017年3月21日
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武邑光裕 [クオン株式会社 取締役 兼 ベルリン支局長]

Nikkei(日系)料理の躍進と消え行く和食、グローバル化の中での日本の行方

 wagamamaは、日本語の「わがまま」をブランド名にし、自らの哲学である「カイゼン(改善)」を次のように説明します。「良い変化を意味するカイゼンは、私たちの心の中にある哲学です。…それは私たちにとって永遠の創造であり、停滞することのない精神なのです」。既成の価値観を打ち破る自在な「わがまま」が、不断の創造を生むという表明です。ここでのカイゼンは、「クール」や創造的破壊とも重なっています。

日本のバウムクーヘン×Nikkei(日系)寿司

ザクセン・アンハルト州のザルツヴェーデルがバウムクーヘンの生まれ故郷と言われている ©Salzwedeler Baumkuchen

 かつて世界が規範とした製造業における生産方式(カイゼン)のみならず、日本は消費者の創意工夫が際立つ文化だと思います。基本が存在するからこそ、絶えず改善が活性するのかもしれません。その意味からすると、ドイツで生まれたバウムクーヘンは日本への越境と飛躍を展開したお菓子です。実はバウムクーヘンを熟知するドイツ人は多くはいません。なぜならそれを作れる職人は限られ、その製法を厳格に守るごく一部の菓子店だけが販売しているからです(*6)。一方、日本では抹茶バウムクーヘンなど味も形も自在に「カイゼン」された商品が全国に登場していて、日本人にとってはなじみ深いお菓子となりました。

 今海外で食べられている寿司は、英国を中心に世界で90店舗を展開するYo! Sushiなど、江戸前の基本とは大きく変容した自由に依っています。食とファッションの創造には「著作権」の縛りがありません。だから世界中で変幻自在な創意工夫が起こります。H&MやZARAのようなファスト・ファッションが世界を席巻したのも、一部の高級ブランドのファッションを限りなく民主化した結果です。

 1980年代、カリフォルニア・ロールに始まった寿司の変容やNikkei料理の影響力は、世界各地の食文化との混淆により、日本では発想すらなかった変化の道を開拓してきました。寿司の源流に、江戸前や大阪寿司といった典型があるということが数多の変幻自在を支えているのかもしれません。

*6 ドイツでは、ビールの製造に「ビール純粋令」があるように、さまざまな食品やモノづくりに個々の製法の定義が確立している。マイスター制度とも連携しており、例えば「バウムクーヘンの定義」は国立菓子協会の規定により、油脂はバター、ベーキングパウダーは不可などの数々の基準がある。



武邑光裕(たけむら・みつひろ)[クオン株式会社 取締役 兼 ベルリン支局長]

メディア美学者。武邑塾主幹。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学情報デザイン科、同大メディア美学研究センター所長、東京大学大学院新領域創成科学研究科、札幌市立大学デザイン学部(メディアデザイン)で教授職を歴任。2015年より現職。専門はメディア美学、デジタル・アーカイヴ情報学、創造産業論、ソーシャルメディアデザイン。著書『記憶のゆくたて デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。2015年よりクオン株式会社ベルリン支局長。2016年、取締役就任。


ソーシャル グローバルトレンド

ヨーロッパ各国から様々なクリエイターやテクノロジストが集まる街、ドイツ・ベルリン。この街を訪れると、自ずとソーシャルビジネスのグローバルトレンドを垣間見ることができます。本連載では、ベルリンに在住する著者が現地で見た、ソーシャルビジネスの最前線を紹介します。

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