この入居一時金は、「償却」という業界独特の商慣習により、ホーム側の収入として回収されていきます。「初期償却」といって、入居時に一時金の15から30パーセント程度が回収され、残りが上記の年数の間に回収されるのです。このため、途中退去の場合、返還される入居一時金は、支払った金額よりも少なくなります。償却期間を過ぎてから退去する場合は、入居一時金は1円も返還されません。

 こうした仕組みの説明も、多くの場合、先の重要事項説明書や契約書に記載されており、それを承諾のうえ、契約を結んでいることになっているはずなのです。ところが、いざ、途中退去の段階になると、思っていたより返還金が少ないと感じてトラブルになることが多いようです。

入居前の「重要事項説明書」
の確認がカギ

 あなたの親をこうしたトラブルから防ぐためには、まず、親の入居前に重要事項説明書や契約書を「あなた自身」がよく読んで、疑問点は契約前にすべて解消しておくことです。そして、親がどのような健康状態になった場合に、退去しなければいけないのか、あるいは、退去する必要がないのかを契約前によく確認することです。

 さらに、入居後に途中解約した際の入居一時金の返還額も、できれば表やグラフに記載されたものを入手できるようにホーム側に依頼することです。こうすることで、少なくとも途中退去に関わるトラブルは、かなり減らせるはずです。

 通常、ホーム側は、これから入居しようとする人に、わざわざ途中退去の場合の入居一時金の返還額がいくらになるかを事細かに説明することはありません。しかし、事前に双方ではっきりと合意しておけば、たとえ、途中退去せざるを得ないときでも、トラブルになる確率は小さくなるので、本来ホーム側もこうした説明に時間を割くことは有益なはずです。

 また、入居前に注意した方がよいのは、どこまでのサービスが月間費に含まれているのかの確認です。パンフレットや料金表を見た限りでは支払い可能な金額だと思っていたのに、入居してから必要なサービスを注文したら、追加料金が多く発生し、「こんなはずじゃなかった」という場合が少なからず見られます。ホームによっては、基本料金は安いのに、実際に必要なものを加えていくと、基本料金の倍以上になるような例も見られます。入浴回数や入浴方法なども、特にクレームが出やすいので事前の確認を徹底した方がよいでしょう。