安売りを禁止すれば、
売上げは伸びる!

 私は、この業界の常識を破り、逆に報奨金だけは残るような価格政策を考えました。

 そもそも、値引きを求める顧客は、他社にも同様に値引きを迫って「あっちはいくらと言っているぞ」と、見積もりを競わせて、どこでもいいからいちばん安い会社から買おうとしています。

 そんな顧客に無理な値引きをして安く売ったところで、収益性の高い車検整備の際にも「どこでもいいから、いちばん安いところで」と考えるはずです。新車を安く売って、しかも自社がいちばん儲かる車検にはつながらない可能性が高い。いわば、「儲からない顧客」なのです。

 そんな顧客にはさっさと見切りをつけ、多少高くても買ってくれる顧客に、しっかりとアフターケアを行えば、車検獲得の確率も上がるはずです。

 そこで、ある日を境に、値引き販売をいっさい禁止しました。当然、現場からは苦情の嵐です。

「値引きしないで、どうやって他社に対抗しろというのですか」
「急に値引きしなくなるなんて、顧客が納得するはずがありません」

 しかし、ここは社長の「鶴の一声」で強引に進めました。利幅が一定の限界を超える値引きをする場合、社長決裁を受けなければならないことにしました。

 こうした「荒療治」は強引に行わなければなりません。民主的に会議で検討するのではなく、すべて社長が責任をとるという姿勢を見せ、とにかく値引き以外の交渉力でがんばらせるのです。

 はじめは文句を言っていた営業マンも、値引きはできないと悟ると、なんとかしようと真剣に誠意をもって交渉するようになりました。その結果、新車の売上が落ちるどころか逆にシェアが上がったのです。