マーケティングに向かないから社長にする?
「若者を経営者に育てるプロジェクト」が始動

 「河合さん、若者を経営者に育てるプロジェクトに参加しない?」

 昨年の夏ごろ、日頃から親しくつきあいをしている、中小企業経営者Y氏からの電話であった。

 「何それ?」と私。

 「そろそろさあ、若い人を経営者に育てる、というのを人生の使命としてやらなくちゃいけないと思うわけよ。でもさあ、自分の会社で、急にわけのわからない若者を連れてきて『この人社長にしますから』ってできないじゃない。それで、一個会社を作って、そこで創業社長として自由にやらせることで、育てるっていうの、どうかなと思って」

 「面白そうだねえ」

 「そうでしょ。河合さんなら、そう言うと思って。そろそろ河合さんも、そういうことしたいでしょ」

 相変わらずの決め打ちっぽい意見だが、図星だ。

 「それで、人材のあてがあるの?」

 その問いに対して、Y氏のにんまりする顔が、あたかも電話の向こうに見えるような声が返ってきた。

 「それがさあ、この前うちの会社でマーケティング担当者の採用をやったの。そのときに、いいのがいてさあ。スペック的に合わないから、うちの会社のマーケティングでは採用できないけれど、創業社長やらせるとしたら面白いと思って」

 「スペック的に合わないから自社で採用をしない人を、社長に?」

 クエスチョンマークが10個くらい並ぶようなY氏の話に、思わず逆質問をする私。