ではiPadをはじめとしたタブレット端末は、この先どこまで消費者に浸透し、販売台数を伸ばすことができるのか、という問題を考えてみます。このまま順調にいけば、多くの調査会社の予想にあるように、数年内に累計で1億台突破は間違いないでしょう。①イノベーターと②初期採用者の一部を取り込めばいいので、それは充分に可能な数字だと思います。

 ただ、③初期多数派や④後期多数派にまで浸透できるかどうかは、まだまだ不確実な要素が残されています。イノベーターと初期採用者がユーザーの“初期市場”から初期多数派や後期多数派がユーザーの“一般市場”に移行するのはそう簡単なことではないのです。

本格的に普及するか、一時的な話題で終わるか

 過去にも一時的には話題になりながら、短命に終わった商品やサービスは星の数ほど存在しています。市場への浸透がイノベーターや初期採用者の“初期市場”だけで終わってしまったケースです。この“初期市場”と“一般市場”にあるミゾのことを「キャズム(深いミゾ)」と呼びます。

 キャズムは、マーケティング・コンサルタントのジェフリー・ムーアが提唱した概念で、キャズムを飛び越えて、市場の中で大きなボリュームを占める初期多数派、後期多数派に採用されると、その商品は広く普及し、企業にも大きな利益をもたらす結果になります。

iPadが本格的に普及するかを、<br />キャズム理論から考える

  では、キャズムを超えるためにはどうしたらいいのでしょうか。まず、一般ユーザー向けに商品の使い勝手を良くしたり、サービス内容を充実させたりする必要があります。さらにプロモーションでもテレビCMを大量投入する、クチコミを利用する、キャンペーンやイベントを開催するなどして初期多数派の取り込みを図っていきます。