ストレスで買い物症候群や摂食障害に

介護する人が抱えるストレス(c)清水貴子
橋中今日子(はしなか・きょうこ)
理学療法士。リハビリの専門家として病院に勤務するかたわら、認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟、の家族3人を21年間にわたって1人で介護する。仕事と介護の両立に悩み、介護疲れをきっかけに心理学やコーチングを学ぶ。自身の介護体験と理学療法士としての経験、心理学やコーチングの学びを生かして、介護と仕事の両立で悩む人、介護することに不安を感じている人に「がんばらない介護」を伝える活動を全国の市区町村で展開中。企業では、介護離職防止の研修も担当。ブログ「介護に疲れた時に、心が軽くなるヒント」では、「介護をしていることで、自分の人生をあきらめないで!」「あらかじめ対策を知っておくことで、問題は回避できます!」といった介護疲れを解消し、心がラクになる情報を発信中。NHK、TBSほか、テレビやラジオでも活躍中。

【落合】介護中はなかなか、買い物にも行けない。たまにお店に寄って洋服を見ると、「この棚にある物を全部ください」とか。そんな買い方をして、あとで請求金額を見てびっくりしたり。買い物症候群のようなときもありました。
【橋中】そういう形でストレスを発散するんですよね。

【落合】食事も、テーブルに座ってゆっくり食べる余裕がない。耳はいつも母の部屋を気にしている。ちゃんと食べたはずなのに、そう認識できていない。自分でゾッとしたのは、真夜中の3時ごろ、冷蔵庫の前に座りこんで、中に入っているものをひたすら食べ続けた。過食症のような時期もありました。 
【橋中】私もむしょうに、甘い物が食べたくなったり。

【落合】軽度の摂食しょう害を繰り返しながら、ジェットコースターに乗っているような。母の体調の変化や目の前の出来事に、即、対応しないといけない。大丈夫、なんとか乗り切れると、自分に言い聞かせる日々。緊張の連続だからストレスが強いのでしょう。
【橋中】同じですね。私も外に出ない日は、すごく食べていた。ゆっくり食べられないのもあるけど、姉が驚くぐらいの量を1人で。いいか悪いかは別にして、それでなんとか自分を保っていたんです。

【落合】ふだん絶対に着ないような洋服も買ってしまう。ストレスがそうさせているんだな。
【橋中】買い物症候群や摂食障害、さっきのトイレの、気づかないふりをする話をして初めて、周囲が切迫感に気づいてくれるんですよね。でも、渦中にいる本人は必死だからわからない。

【落合】言葉にすらできないことも、あるでしょう。黙っていると、まわりからは「元気そうじゃない」とか「あなたなら大丈夫よ」とか言われる。でも、私はもうダメ。崖っぷちに立っていて、ここから落ちたら終わり、というような切羽詰まった心理状態だったりする。SOSが必要ですよね。
【橋中】元気そうに見えても、実際はぎりぎりの状況で綱渡りしている感じですよね。