陥りがちな思考の罠に迫る「カイゼン!思考力」。今回は、多数者効果を取り上げる。

――問題です

 以下のAさんの問題は何か。

 Aさんは、友人であるBさんに誘われて、あるビルの奥まったスペースにあった画廊に入った。Bさんは、しきりに「この画家の絵いいわねー」とつぶやく。店の店員も、絵の良さを必死にAさんに説明する。

 画廊には他にもその画家の絵が数点あり、数人のお客さんがいて、店員の説明にうなずきながら、「じゃあ、買おうかな」なんて声が聞こえてくる。

 確かに悪くはない絵のように思えるが、Aさんにとっては、数十万円の価値がある絵には思えない。しかし、そうしている間にも、数件の商談が成立しているようであった。

 Bさんは、「ほらー、この画家人気なんだから」と、Aさんに勧める。そのうちAさんも、「みながそこまで評価する絵なら買おうかな。数十万円とは言え、買えない額ではないし。たまには美術品を買うのもいいかもしれないわ」