『コミュニケーションは頻度』とはこういうことなのかと実感

上司とのコミュニケーションこそが、部下を成長させる『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』 本間 浩輔 (著) ダイヤモンド社刊 1944円

 2012年に、私は思いがけず人事の責任者になりました。いろいろな制度をつくり、実施していこうと考えましたが、なかでもいちばん力を込めたのが1on1です。

 上司と部下との間のコミュニケーションを活性化させたい、ということはそれまでも考えていました。

 2012年当時のヤフーは、隣の席の同僚ともメールでコミュニケーションするような環境だったのですが、それでいいとは思えませんでした。私自身の経験でも、部下と真剣に対話しなければならない、と思い至る経験がありました。

 ある事業部門での部長時代のことです。当時、私はスポーツ事業を担当していて、長い時間を社外で過ごしていました。

 しかし、私はコミュニケーションが得意な方だと思っていたため、社内のコミュニケーションも大丈夫だろうという過信があったのです。

 あるとき、部下に対して「このままでは評価を上げられない」というような、ネガティブなフィードバックをしなくてはならないことがありました。するとその部下はカチンときたようで「本間さんが普段何をやっているのかわかりません」と言い放ったのです。そのときに、「これはまずい」と思いました。

 そのころ、コーチングの勉強もしていたのですが、「ああ、コーチングの本に書いてある『コミュニケーションは頻度』とは、こういうことなのか」と実感しました。

 半年に1回飲み会をするよりも、3ヵ月に1回一緒にランチに行くほうがいいし、3ヵ月に1回ランチに行くよりも毎月1回1時間話したほうがいいでしょう。また毎月1回、1時間話すよりも毎週15分ずつ話したほうがいい。

 コミュニケーションは頻度が大事です。仲のいい人とは頻度が高いけれども、ちょっと苦手な人に、たまたま声をかけたときに断られたりしたら、やはり声をかけなくなってしまう。そんなことがありがちです。

 そこで、全員とコミュニケーションの頻度を上げようと思って始めたのが、1on1ミーティングの原型になったものです。「ちょっとお茶しよう」と一人ひとりに声をかけては、カフェで話を聞くようにしたのです。

 当時は、「本間はしょっちゅう、お茶をしに行っている」、とよくない評判も立ったようです。