[ブリュッセル 28日 ロイター] - 英国のメイ首相は29日、欧州連合(EU)基本条約であるリスボン条約50条を発動し、EUに対して正式な離脱通知を行う。これにより、英国のみならず、EUも変わることになる。

以下に、その5つのポイントを挙げる。

<EU予算:資金はどこへ>

EU予算は加盟国の財政支出のわずか2%を占めるにすぎない。しかし東欧では、振り当てられる割合は大きくなる。ポーランドの予算に占める割合は約8%、ブルガリアでは5分の1近くに上る。

英国が離脱すれば、EUは純受益国である加盟国に割り当てる資金が約6分の1減ることになる。そうなると、2021年から始まる7年間の財政計画を巡り、域内で東西対立が発生する可能性がある。

短期的には、離脱にあたり英国が何を負担するかを巡って同国とバトルが繰り広げられるだろう。英国政府は、研究費など主要なEU予算の一部にアクセスできるよう拠出の継続を選択するかもしれない。だが農業助成金など多額な分野は、根本的に見直される可能性がある。

<力の均衡:見捨てられる英友好国>

英国は欧州議会に持つ12%の自国票を駆使することによりEUの歳出を抑制し、自由貿易を推進してきた。英国のEU離脱は、北欧諸国やオランダのような、英国より小さな北部の友好国を心配させている。

英国が加盟入りを支援してきたより貧しい東欧のEU諸国は、ドイツとフランスが低賃金労働者に対する障壁を強化したり、元共産主義国が嫌う連邦的なEU権限を強化したりする可能性を危惧している。とりわけバルト諸国のようなEU加盟を希望する国々は、EUのさらなる拡大を懸念する裕福な西欧諸国に立ち向かう友好国を失うことになる。

ユーロを導入している19カ国にとっては、欧州議会内において主な障害が取り除かれ、非ユーロ圏を票でどうにかしのぐことが可能となる。ポーランドとスウェーデンが主導する非ユーロ圏は、ユーロ圏がEUの政策を決めるのを阻止すべく、ユーロ圏のなかで反旗を翻す大国を必要とするだろう。

フランスはEU加盟国で唯一の核保有国であり、国連安全保障理事会で拒否権を持つ常任理事国である。英国のEU離脱により、米国主導の北大西洋条約機構(NATO)以外にEUの防衛協力を拡大するというフランスの野望に断固反対する国もいなくなる。防衛はすでにEUの政策課題として再び浮上している。

一方、ドイツは、その経済力によって欧州の支配者として見られたいのか、それとも英離脱後のEU市民の約5人に1人が存在する国として見られたいのか、2つの思いに揺れている。特に、EUを共に創り、経済的に苦しむフランスといかにバランスを保つかについて不安を抱いている。

<世界のなかのEU:影響力低下>

EUは、米国や他の英語圏との間を取り持つ大国を失う。歴史ある外交力と軍事力に裏打ちされた英国の洞察力と、中国やロシアや中東の大国に対する同国の影響力は、EUにとっても有益だった。移民問題で大きな懸念の対象となっているアフリカにおいては、英国による援助予算や他の影響力は主要な役割を果たしてきた。

英国のロシアに対する強硬路線は、バルト諸国やオランダのような友好国から支持を得ている。これらの国々は、フランスやイタリア、そして恐らくドイツによる弱腰な態度が、対ロシア制裁やロシア産ガスへの依存を削減することに対するコンセンサスを損ねることを危惧している。

<政治文化:ブレグジット万歳か>

EU機関で働く英国人職員は、その人数は十分ではないものの、上級職においてだけでなく、欧州議会においても、過去44年間にわたって主な役割を築いてきた。離脱により、EUの職から英国人が締め出されることとなり、それも失われることになる。

多くの政府、とりわけ小さな国の政府は、EU創設にあたりフランスが持ち込んだ中央集権的で統制経済的な伝統よりも、実用主義的で自由競争主義的な英国のやり方を評価している。

英国は1つの遺産を残すことになるだろう。それは、EUの実用言語として英語が生き残る可能性が高いからだ。とはいえ、フランス政府の一部からはフランス語の復活に期待する声も上がっている。

<生き残りゲーム:タブー破り>

EU離脱の是非を問う住民投票が英国で実施されて以降、EU指導者たちは、残りの27カ国における新たな団結を呼びかけている。各世論調査では、市民たちのEU支持率は概ね上昇している。しかし、各国政府が異なる優先事項を抱えるなか、英国との離脱交渉によって、そうした団結がまさに試されることになるだろう。

前例のないEU基本条約(リスボン条約)第50条の発動はこれまでのタブーを破り、「分かたれることのない連合」への祈りはむなしく響いている。EUは今後も離脱の脅威に取り組まねばならず、それは全体的な意思決定に影響を与え続けるだろう。

(Alastair Macdonald記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)