日本人の住宅に対する選好は、基本的には持ち家嗜好、かつ新築嗜好であるといわれている。実際、わが国における既存住宅流通シェア(既存住宅流通/全体(既存+新築)流通)13.5%という値は、米国の77.6%、英国の88.8%、仏国の66.4%と比較すると、極めて小さい。その背景には、日本人独特の「穢れ」の精神(茶碗や箸に代表されるように、他人が継続的に一度使ったものに対しては、物理的にその他人の痕跡を全て完全に排除したとしても、精神的にはまだ「汚れ」が残っていると感じてしまう精神状態)や、中古住宅流通市場の整備不足等、様々な要因が挙げられる。

 そんな中、最近では「値ごろ感」や、「中古+リフォーム」という手法を使い、より自らの嗜好に合わせた住宅にアレンジできるという新しい価値観の台頭等により、中古住宅に関するニーズも増加し始めている。今回は、これまで住宅の購入オプションの中においては、どちらかと言えば敬遠されがちであった「中古住宅を選択することの価値」を、経営コンサルタントの視点で、あらためて紐解いてみたい。

「持ち家なのに購入価格が安いこと」の価値

 中古住宅を選択する価値の1つ目は、まずは単純に「価格が安い」ということである。

 新築で持ち家を購入する場合、全額キャッシュで購入できる方を除き、多くの人がローンを組んで購入する。この時の購入者の状態を、企業の財務状況を分析するバランスシート分析で評価するとすれば、それは即ち、大きな負債を負って資産を膨らませた状況にあるといえる。しかも資産の部は、その大半を「新築住宅」が占め、さらにこの住宅(=固定資産)は時価会計の原則に則り、毎年その資産を目減りさせなければならない。だとすれば、一定期間後、ローンの残高によっては債務超過に陥る可能性も高いということになる。

 つまり、新築住宅をローンで購入する事は、資産の目減り具合とローン(長期負債)の返済具合のバランスを十分に考慮しなければ、事実上、デフォルトリスクが高まるということである。

 その点、中古住宅の場合、ある程度、そのデフォルトリスクが低減される。第一に、中古住宅は新築よりローンがつきにくいという事情がある一方、仮にローンを組む場合においても、当然その額や期間は小額かつ短期に収まるといえる。

 第二に、資産の部に入る「中古不動産」は既に十分に減価された状態で資産参入されるので、時価会計に則った資産の目減り具合も、新築に比べればそれほど大きくはない。よって、負債の額が資産の額を上回るという意味で定義される「債務超過」に陥るリスクは、大きく低減されると言ってよいだろう。