ヤクルトは半世紀近い海外展開が功を奏し、今では営業利益の半分以上を稼ぎだすようになっているのですが、新興国市場での成功の秘訣は何だったのでしょうか。ヤクルトの成功の秘訣を理解するのに役立つのが、C.K.プラハラードが著書『ネクスト・マーケット』で提唱したBOP市場の攻略メソッドです。

経営学グールー、プラハラードが提唱した理論は
ヤクルトが成功したモデルと合致する

 『ネクスト・マーケット』は2004年にアメリカで出版され、日本語版も翌2005年に発売。新興国の貧困層・低所得者層というそれまであまり取り上げられることのなかったマーケットに光を当て、BOPという言葉をビジネス界の表舞台に押し上げるきっかけになりました。

 プラハラードは『ネクスト・マーケット』で、BOP市場の攻略方法を多岐にわたって紹介していますが、その中でヤクルトの成功の秘訣に繋がるものもいくつか見出すことができます。筆者なりにそれを3つにまとめると、

①商品の現地化
②販売方法の現地化
③商品の販売と一体化した啓蒙活動

 となります。

BOP市場での成功の秘訣

ヤクルトは、なぜ新興国市場で強いのか<br />ミルミル伸びるBOP戦略の秘訣

 

 

 

 

 “①商品の現地化”から説明します。BOP市場の顧客は、その日に消費するものはその日に買う、という購買傾向があります。買いだめや大きなボトルを買って保存するという先進国では当たり前の消費行動はあまりありません。これは所得が低いことに加え、保存する場所や機器がない、という事情が大きいでしょう。ですから先進国のメーカーがBOPで商売をする場合には、パッケージ単位を小口化するのが1つのカギになります。

 BOP市場で成功しているアメリカの日用品メーカー、P&Gはシャンプーを1日に使う分量に小分けした使いきりパックで新興国市場を攻略しています。一方、ヤクルトはもともとが65ml入りの小さなプラスチック容器に入った商品ですから、わざわざBOP用にする必要はなく、日本の商品をそのまま持ち込むことができます。これは大きな強みです。

 “②販売方法の現地化”は、商品を提供するプロセスを現地の事情に合わせてカスタマイズすることです。新興国は、先進国のようにいたるところにスーパーマーケットやショッピングモールがあって、気軽に電車や車でショッピングできるわけではありません。地方に行けばいくほど小さな個人商店や行商が流通の中心を担っています。その点、ヤクルトの独自の販売システム、ヤクルトレディの仕組みはまさにBOP市場にはピッタリの販売手法です。