「言われたことをやればタダ乗りじゃない」
自主性のない草食系は、会社にとって必要か?

 先日、フリーライダーについての講演を行なった後の懇談会で、ある大手企業の人事部長からこういう相談を受けた。

「自分から仕事を探すとか、言われたことに付加価値を付けた仕事を自主的にするといった社員は、明らかに減っていますよね。世代のことは言いたくないが、若い人に多い気がします。フリーライダーとかタダ乗り社員の話をしても『言われたことやってんなら、文句言われる筋合いないですよね』という感じです。彼らのようなタイプにはどう接したらいいんでしょうね」

 拙著『フリーライダー――あなたの隣のただのり社員』では、このタイプは「アガリ型」か、あるいは最終章で述べている「草食系社員」に分類される。基本、自分がフリーライダーでいることに無自覚か、自覚していても罪悪感が薄いのが特徴だ。

 これらのタイプのうち、アガリ型については本の中で対処法を述べているが、草食系社員についてはデータが少なく、対処法を述べるまでに至っていなかった。

 現在、私たちは情報を収集しているが、このタイプを本の分類に含めることができなかった理由の1つは、草食系に代表されるこのタイプの人々は、いわゆる「普通の社員」と比較して、会社組織と個人との関係について、根本的なところで見方が異なっているからであるように思われる。

 円満退社した人が今でもよく使うフレーズに、「以前は○○社にお世話になっており……」というものがある。この言葉は、自分を育ててくれた会社組織への感謝の意味で使われることが多い。拙著でも述べているように、会社組織は、個人では出せない付加価値を協力し合うことで生産する場であり、その付加価値の恩恵にあずかることができたことを感謝しているのである。