67年ぶりに年間死者数が4000人を下回るなど、交通事故被害者は確実に減っている。背景にあるのは厳罰化の流れ。ドライバーは大きなプレッシャーを抱える時代となったが、一方で無免許や飲酒など悪質なドライバーへの厳罰適用はまだ道半ば、遺族からは怒りの声も上がる。春の交通安全週間にあたって、知っておきたい交通事故の最新常識をまとめた。(フリーライター 星野陽平)

厳罰化に新たな刑罰の規定も
交通事故減少の背景

 今年も「春の交通安全週間」が始まった。期間は4月6日から15日までで、特に10日は「交通事故死ゼロを目指す日」となっている。警視庁のまとめによれば、2016年に全国で起きた交通事故による死者数は、前年比213人(5.2%)減の3904人。年間の死者数が4000人を下回ったのは、1949年以来、67年ぶりだ。

交通事故厳罰化時代、ドライバーは「自衛」しないとヤバい厳罰化の成果もあって、交通事故死者数は大きく減ったが、認知症ドライバー問題など課題は多い。また、厳罰化の流れの中で、ドライバーは万が一に備えた対策をしておく必要がある

 交通事故による死者数は、90年代前半から減少の一途を辿っているが、これは、交通法規の度重なる改正により、罰則が強化された影響も大きいようだ。交通事故問題に詳しいジャーナリストの柳原三佳氏に、近年の交通事故をめぐる状況について伺った。

「重大な交通事故が起こるたびに、“法律の穴”によって軽い罪しか問えないことに対する、被害者や遺族の要望、世論が高まりました。こうした状況を受け、この20年ほどで交通法規は度重なる改正で厳罰化されてきました。特に飲酒運転での死亡事故。従来は過失で処理され、懲役7年が最高刑でしたが、2001年から導入された危険運転致死傷罪が適用されると、懲役15年まで問われるようになっています」

 14年5月から施行された自動車運転死傷行為処罰法でも、これまでなかった刑罰の規定がいくつも設けられている。特に飲酒運転や無免許運転など、悪質な運転で事故を起こした場合の罰則が重くなっており、たとえば、危険な速度で逆走したり、通行禁止道路を走行して人身事故を起こした場合は最高で懲役20年。無免許の場合は、それ以上の重い刑罰に問われることになる。