ひょっとしたらドラッカーは、
経営論への僕の疑問に応えてくれるかも!

――最初に読んだ印象はどうだった?

加藤 これがまず単純に面白かった。ブログに掲載されていたのは、2008年7月で、5000字程度のシノプシス(注:映画の粗筋)のようなものだったんですが、もう単純にすごく面白いと思いました。

 最初に思ったのは、高校野球に対する僕のイメージを覆すところです。これは僕が高校野球に詳しくなかったのが大きいのですが、高校野球って根性論の世界だと思っていたんですよ。甲子園に出るのもその延長で、根性がまず重視されるのかなって思っていたのです。それが精神論ではなく、ある方法論を導入することでチームが変わり強くなるというアイデアが書いてある。予想を裏切られて、すごく面白いと思いました。

――なるほど!

加藤 次に思ったのは、ドラッカーの『マネジメント』って、僕が経営学に疑念を抱いていたアートに対しての回答が、書いてあるのかなということです。じつはその頃まで、ドラッカーの著書はあまり読んでいませんでした。唯一読んだのは、『経営者の条件』だったんですけど、これは組織というよりは個人の働き方について書かれた本ですよね。だから、あまりドラッカーについて知らなかったんですが、『マネジメント』という本は、ひょっとしてすごくいいこと書いてあるかもしれない、という予感みたいなものは感じました。

――それで本の企画にしようとした?

加藤 もう少し先があって、とは言え、僕は岩崎さんのこの原稿が、ドラッカーの解釈として正しいかわかんないじゃないですか。ドラッカーにくわしくないから。だから、これをプリントアウトして社内の何人かの人に見てもらいました。この時も単行本の企画としてどうかという感じではなく、「ネットでこんな面白いの見つけましたよ」というノリでいろんな人に渡していたわけです。

 そうしたら、ドラッカーの本の編集者が「これは凄い。この人は、ドラッカーのことを本当によくわかって書いているよ」と言ってくれたんです。特に、ドラッカーの理論を高校の野球部という非営利組織に適用しているところがいいといわれました。『マネジメント』の本質を伝えるのに、実は「利益」が邪魔になるんです。マネジメントは、お金が絡まない組織でも必要とされるので、高校野球を題材にしたことで、マネジメントのよさが浮き彫りになっていると言ってくれました。そして、「この人に早くあったほうがいいよ」って。

――見せてよかったね。

加藤 本当にそうです。「専門家」の評価が僕の想像以上に高かったので、早速このブロガーさんに連絡しようと思いました。でも、このブログにはコメント欄もメールアドレスもないので、連絡しようがないんです。そこで、「はてな」のアカウントを作り、ブックマークをつけました。そこには「これを読んでとても興味があります。このメールアドレスに連絡くださいませんか」と自分のメールアドレスを書き込んでみました。そうしたら、半日ほどで岩崎さんからメールをもらって、お会いすることになりました。