「巻き込み」というユニクロのDNA

  私は2003年、フリースブームが去った後、上場以来初の減収減益という時期に外資系企業からユニクロに転職しました。
  その当時、部署のメンバーは自分の業務だけで手いっぱいで、完全に余裕がなく、疲弊している状態でした。

  しかし、V字回復を達成するための大変革が必要とされていた時期だったので、柳井さんから言われた、

「すべて変えてください」

  というのが、最初のミッションだったのです。

  しかし、変革しようとしても、誰もがパンパンの業務を抱え、ギリギリのところで仕事をしているため、自分以外の仕事を喜んでやるという人は皆無でした。

  予算がない、人が足りない、時間がないという三重苦に加えて、転職してきた30代の女性マネジャーに対して味方はゼロ。
  挙句の果てに、マネジャーとして何かをしようとしても、メンバーにまったく相手にされないという有り様でした。

  誰もが自分のことで精いっぱいで、変えないとヤバイと心の片隅で感じていても、その変化を受け入れる余地はまったくなく、変化することはかえってストレスだと感じていたのです。

  恐らく、通常はそこで断念してしまうでしょう。
  しかし、私はそこでユニクロに流れるDNAの存在に気づいたのです。
  柳井さんが社員に対して頻繁に言っていたのが、

「チームで仕事をしてください」

  ということです。
  たった一人で行う仕事には限界があります。
  企業は組織ですから、たった一人の力で大きな仕事を動かしていくことはできません。

  また、問題に直面した場合、一人の解決力では対応しきれず、スピードも遅く、会社にとって取り返しのつかないミスや失敗につながりかねません。
  ユニクロで求められていた厳しい「実行力」を身につけるには、一人の力で何とかしようとするのではなく、周りを巻き込んで「チームで考え実行する」という発想が必要でした。
  柳井さんは他にも、

「プロジェクト的に仕事をしてください」
「自分の部署だけの問題ではありません」

  というフレーズを繰り返し言っていました。
  これは一つの大きな成果を出すためには、全部署が連動して互いを巻き込みながら、全精力を注いで実行していくということです。

  別の部署のことだから自分は関係ないということではなく、社内の垣根を越えてプロジェクト単位で人が集まり、横断的に仕事をするのです。