そんな誤算続きの三菱重工にも、おぼろげながら光が見えてきた。三大問題プロジェクトのうち、二つの止血にメドが付いたのだ。

 昨秋、大型客船建造からの撤退や他の造船会社との提携を含む造船改革に踏み切った。また、この3月には米サンオノフレ原発の放射性物質漏えい事故の賠償金額が140億円に確定した。

 だが、これで一安心といかないのが三菱重工の厳しい現実である。

 残る一つの問題プロジェクト、南アフリカでの火力発電所建設プロジェクトが予断を許さない状況になっている。三菱重工は、事業パートナーの日立に7900億円を請求しているが、十分な支払いが得られなければ経営への影響は甚大だ。何より、争いの長期化は両社に遺恨を残すことになりかねない。

延長戦に突入した宮永体制の真価
鍵は新規事業

 さらに深刻なのは、稼ぎ頭の収益悪化だ。17年3月期第3四半期における最大の減益要因は米ボーイング向けに主翼などを造る民間航空機事業である(図(4))。

 ボーイング777などのパーツの受注減や航空機メーカーからの値下げ要求で収益が悪化。しかも、メーカーからの発注減は「当面、続く」(宮永社長)。三菱重工が手掛ける主翼などはIHIが製造する航空エンジンに比べて、中国メーカーの追い上げが激しく、価格競争に陥りやすいことも懸念されている。

 大型プロジェクトの誤算、稼ぎ頭の失速により、当初定めた成長分野にも暗雲が垂れ込めている。

 第一に、有望事業と期待されたMRJの開発コストが膨らみ続けている。三菱重工は今年2月、初号機の納入を18年半ばから20年に先送りした。開発遅延により、受注契約のキャンセルリスクが高まっている。

 第二に、「MRJに次ぐ新規事業」への投資が尻すぼみになりつつある。昨年は、「17年春には新規事業を大々的に発表する。航空機など既存事業にとらわれない全社を挙げたビジネスになる」(三菱重工幹部)と大見えを切っていた。

 だが、最近になって、「MRJに匹敵するような派手さはなく、エネルギー関連事業の強化など、既存事業の延長線上にとどまるのでは」(三菱重工関係者)との見方が強まっている。

 平時ならば、三菱重工の社長任期は4年。4月で5年目となり、“延長戦”に突入した宮永体制にとって、今期は文字通り総仕上げの年になる。新たな稼ぎ頭を生むことなく止血作業に終始するだけでは真の改革とはいえないはずだ。