要するに、エネルギー安全保障の達成にあたっては、「資源の確保」「国内の安定供給」そして「設備の安全性」を考慮しなければならないのである。

重要なのはエネルギー安全保障の強化

 さて、今回の福島原発の事故から得るべきエネルギー政策上の最大の教訓は、3Eのうち、明らかに「エネルギー安全保障」にかかわるものであろう。

 「設備の安全性」については、東日本大震災の被害、とりわけ津波のインパクトを想定した安全対策がなされていなかった。また、事故後の計画停電や、今後の電力不足の問題は、「国内の安定供給」にかかわる問題である。さらに、原子力発電そのものが、エネルギー自給率の向上やエネルギー源の多様化といった「資源の確保」の観点から推進されてきたのであるから、その停止は、「資源の確保」の問題に直結している。

 問題は、現在、エネルギー政策の見直しとして挙げられている論点が、エネルギー安全保障の強化という基軸を有しているかどうかである。

 例えば、発電会社と送電会社を別にするという発送電分離の議論が浮上した点は注視すべきだ。発送電分離とは、これまでさんざん議論され、多くの問題点が指摘されてきた話である。しかも、今回の原発事故の反省を踏まえて目指すべき、エネルギー安全保障の強化という方向性に逆行するものですらある。すなわち、震災と原発事故を踏まえた見直しの結果、エネルギー安全保障が強化されるどころか、その反対に弱体化するおそれが極めて高いのである。