4月6日に公表された、韓国ギャラップ調査によれば、国民の党の元共同代表の安哲秀候補が文候補を猛追している。先週行った調査では、文候補支持が40%、安候補支持は29%であったものが、7日には文候補支持が38%に対し、安支持が35%と、その差は誤差の範囲内にまで縮まっている。これは去る3日に行われた「共に民主党」内の予備選挙で脱落した安熙正氏、李在明氏の支持層の票が、安哲秀候補に移ったためであろう。

 韓国の公共放送KBSと聯合ニュースが9日に発表した調査では、政党候補5人のうち、安氏の支持率が36.8%、文氏が32.7%と初めて安氏が首位に立った。今後の注目点は、15、16日の大統領候補登録の後も、安候補が上り調子を維持できるか、に集まっている。

 確かに文候補の北朝鮮融和策は危険である。文候補は、北朝鮮の人々は同じ民族であり、その指導者である金正恩と対話していくと主張する。文候補の盟友、故盧武鉉元大統領は北朝鮮の核開発は自国の防衛のためであるとして理解を示してきた。文候補も同じ見方であると考えられる。また、宋旻淳元外相(盧武鉉政権当時)の回顧録によれば、文候補は2007年に国連総会で北朝鮮の人権決議を審議した際、韓国の投票行動を北朝鮮と協議したうえで棄権している。さらに、2007年の大統領選挙の2ヵ月前になって大統領候補の反対を押し切り、故盧武鉉の北朝鮮訪問による首脳会談を推進して南北関係を既成事実化しようとしたのも文候補である。

 文候補は、「大統領になった際、米国よりも先に北朝鮮に行って何が悪い」と述べているほど。文候補が大統領になれば、これまでの日米韓の結束と、北朝鮮の核開発の放棄を求めてきた努力が水泡に帰す懸念が強い。

 他方、安候補は中道寄りの候補と言われ、北朝鮮の脅威を見誤るべきではないとしており、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備についても「国家間の合意は尊重すべきだだ」として支持し、文候補の「次期政権が決めるべき問題」として消極的姿勢を示すのとの違いを示している。

 ここに来て安候補が猛追してきたことは驚きであるが、韓国国民が北朝鮮の脅威を直視し、危機意識を持ったのであれば救いである。同時に仮に文候補が当選するような事態になっても、勝手に北朝鮮と気脈を通じることがないよう何らかの対策を考えておく必要がある。

 THAAD配備の前倒しはその一つ。韓国国内で北朝鮮への対応について、マスコミを中心に活発な論議を行って国民の意識を高めておくことも、単に選挙における正しい投票行動を促すだけでなく、北朝鮮に対する過度な接近を抑制する手段として有効かもしれない。

理性的な判断ができない状況
慰安婦像について今は静観の時

 次期政権下では、残念ながら日韓関係が一層緊迫することは避けられないであろう。特に、慰安婦問題については全ての候補が、合意の破棄や見直しを主張しているからだ。

 ただ、それぞれの候補がどれだけ強く慰安婦合意に反対しているかは、現在の各候補の主張からだけでは分からない。文候補の反日はより確信的であろうが、安候補がより現実的かはまだわからない。大統領選においては、朴前大統領の政策を全否定することが当選への道と考えている節があるので、大統領選挙後も変わらないかは何とも言えない。言えることは表面的な全候補の主張に大きな違いがあるわけでなく、日韓関係を争点化しても“得点”にならないということである。最近の安候補の猛追に見られるように、大統領選に影響を及ぼしているのは北朝鮮問題であり、日韓関係ではない。