「鳥の巣」などの巨大な体育館、「人民医院」と名付けられた総合病院、100万人以上の人口を有する300以上の都市、巨大という言葉がぴったりとくる中国では、公園に行くと、たいていの人が一眼レフカメラをぶら下げている。カメラもコンパクトより一眼レフが好まれる。繁華街の付近にある外国製の高級車は、そのブランドで贅沢を競っているが、ブランドがわからない場合は、大きさがまず比較の基準にされている。

それらの現象が、「中国経済のバブル化」であるという警鐘が鳴らされてから久しい。しかし、1998年あたりのアジア金融危機、2003年からSARSなどの思いもかけないリスク、2008年の四川大地震、リーマンショックなどなどに襲われ、バブルの警鐘を乱打されながらも、これまでのところ崩壊は中国に訪れてこなかった。その反対に中国経済は元気で、今後も長く成長していくだろうという思いが徐々に強くなっている。

「期待を超えて成長していこう」と、ここ数年謳い続けてきた佳能(キヤノン)中国の小沢秀樹総裁は、05年から10年までの間に毎年30%の売上増を実現してきた。12年にアジアで売上を100億ドルにして、15年には200億ドルの規模に持っていきたいと強気に発言している。市場が未開墾のときには成長も大きいが、ある程度成熟していけば、継続的に30%増を実現していくのは難しくなってくるはずだ。それにしてもなぜ佳能中国はこんなに強気なのか。5月20日にはじめて、中国でキヤノン博覧会を開いた上海会場で小沢総裁を取材した。(在北京ジャーナリスト 陳言)

平均30%の成長を
維持してきた要因

――30%の成長目標をずっと掲げてきたが、09年、10年は、リーマンショックの影響は小さくなったのですか。

中国で年率30%の売上成長を達成<br />キヤノンの次の目標は15年アジア売上200億ドル<br />――佳能(キヤノン中国)の小沢秀樹総裁が語る高成長の秘密小沢秀樹・キヤノン株式会社常務取締役、キヤノンアジアマーケティング社長、キヤノン(中国)有限公司総裁。キヤノンに入社してからアメリカ、シンガポール、香港で海外経験を積み、05年よりキヤノン(中国)の総裁になり、その後、年平均30%の成長率を保ってきた。

 平均して30%の売上成長率は、変わっていません。もちろん、09年と10年にBtoBの製品は影響を受けたし、年率にして09年には30%成長も達成できなかった。10年の上半期は25%ぐらいの成長率で、下半期は40%以上に引き上がったので、年平均にして30%を上回りました。

「期待を超越したい」と私たちは言っています。中国経済も09年の下半期から回復しはじめ、10年の下半期となると、どんどんスピードを上げてきて、期待を超越しようとする私たちにチャンスがやってきました。

――中国経済をけん引しているのは、個人消費より公共投資だと言われています。その中でキヤノンの製品はたくさん売れています。これは矛盾しているようにも見えます。