Yawen Chen and Ryan Woo

[北京 5日 ロイター] - 最近結婚したばかりの20代の写真家Ji Weiさんは、所有する北京市内のマンションを手放し、615万元(約9845万円)の新しいマンションに買い替えようと目論んでいた。

だが、不動産の価格高騰を抑制するための新たな措置によって、その計画が破たんするのではないかと彼女は懸念している。

約2200万人が暮らす北京は、住宅価格の上昇を阻むため、投機抑制を狙う中国当局にとっての「最前線」となっている。当局は、価格の高騰によって家計債務が膨張し、銀行の信用リスクを高め、住宅取得が困難になることによって人々が不満を募らせることを懸念している。

北京における平均的なマンション価格は依然として東京やロンドンに比べれば安いが、昨年の最高価格を12月に記録した後、今年に入っても記録を更新し続けている。

住宅価格データを提供しているファン・ホールディングス傘下のサイトFang.comによれば、北京の中古マンションの平均価格は、3月の時点で1平方メートルあたり6万3082元(約100万円)。90平方メートル程度の質素なマンションでも、82万4850ドル(約9815万円)になる。

「10月に部屋を探し始めてから、2寝室のマンション価格は約50%も上がった」とビッグデータ関連企業で働く33歳のJiang Yuanさんは語る。

前回実行された不動産規制の強化によって、北京の中古マンション市場の取引件数は、12月末までの3カ月間で37%低下したものの、価格上昇に歯止めをかけることはできなかった。

3月半ば、北京市当局は再び動いた。2軒目の購入に関する頭金の最低比率を、価格の50%から60%に引き上げたのだ。大型の住宅については、同じく70%から80%に引き上げられた。

さらに、返済期間25年以上の個人向け住宅ローンの新規取り扱いを停止。これにより、住宅購入者は実質的に、より高金利の短期ローンを強いられた。3軒目の不動産の購入はすでに禁止されている。

さらに、「2軒目住宅購入者」の定義も拡大され、中国のどこであれ、過去に住宅ローンを利用したことのある人も含まれることになった。また北京市当局は、個人による商業用不動産の新規購入を制限し、1軒目の住宅に関する頭金比率の軽減措置を利用するために購入者が離婚を偽装するという抜け道を塞いだ。

最新の規制強化が実施されてから1週間で、購入意欲を示す新規顧客の数は3分の1近く減少し、住宅内覧の件数も30.7%低下したと北京の大手不動産仲介業者Lianjiaのデータは示している。

とはいえ価格影響を見積もるには、まだ時期尚早かもしれない。

Fang.comのデータによると、北京における中古住宅価格は2月の3.3%上昇に比べると減速しているものの、3月も1.07%上がっている。住宅価格の3月公式データは4月18日に発表される予定だ。

「新たな措置が導入されて、市場は凍り付いている」と、かつて国営シンクタンクの中国社会科学院で研究員を務めていたYi Xianrong青島大学教授は語る。「住宅販売は90%減少する可能性がある」。

「待ち伏せ攻撃のようだった」と冒頭に登場した写真家のJiさんは嘆く。所有マンションの売却先が手を引いてしまったため、急いで別の買い手を見つけなければ、より大きな新居を買うための契約を履行できず、50万元以上の保証金を失ってしまうという。

「50平方メートルのマンションなど、もう誰も欲しがらないのではないかと心配している」と彼女は言う。「新たな政策の影響を受けているのは私だけではない。私は、長くつながったチェーンの1つの輪にすぎない。1人が契約を破棄すれば、チェーン全体がバラバラになる可能性がある」

北京における今年の住宅購入者のうち、Jiさんのような、より上位の住宅への住み替え需要が約80%を占める。地元の不動産仲介業者はそう試算する。

一部のデベロッパーも、市場への影響を懸念している。

「今回の引き締めは過去に前例がないほど厳しい。市場の展望については、言い尽くせぬほど悲観的だ」と中国不動産開発の融創中国<1918.HK>の孫宏斌会長は28日、金融専門誌に語った。「主に政府が不動産価格を抑制していることにより、私たちの業界ではリスクが非常に高まっている。現在の水準で土地を買えば、確実に損をするだろう」

<北京以外にも広がる規制強化>

北京以外の都市にも似たような動きが広がっている。

Eハウス・チャイナR&Dインスティチュートのアナリストで、中国の住宅政策に注目しているYan Yuejin氏によれば、わずか2週間のうちに、少なくとも50都市が北京に追随したという。そのなかには、タク州市や廊坊市など、投機的な動きによる住宅ブームの恩恵を受けてきた小規模・低開発の都市も含まれている。

中国の住宅都市農村建設省は先週、他の地域も北京の引き締め措置の経験に学ぶべき、との見解を示したと国営メディアが報じた。北京市のXu Jianyun住宅局長が、当局は断固として価格上昇圧力を封じ込めると発言したとも伝えられている。

こうした措置は投機筋を狙ったものだが、純粋に住宅を購入しようという人々にも影響が及んでいる。

前述したビッグデータ関連企業で働くJiangさんは、東部の港湾都市、青島にマンションを所有しているが、勤務地の北京で最初の家を購入したいと考えている。

だが、「2軒目購入者」の定義が変わってしまったため、彼が支払うべき頭金の比率は、北京における「1軒目購入者」に適用される35%ではなく、最低でも60%になってしまった。

「2寝室の物件を購入するのに、頭金は最高でも220万元だと見込んでいた」とJiangさんは話す。「ところが新条件の下では、思いどおりの家を買うには頭金350万元を払わなければならなくなった」

だが、不動産デベロッパーであるグリーンタウンチャイナ<3900.HK>のCao Zhounan最高経営責任者(CEO)兼会長は、全国的に住宅の販売戸数が減少すると予想する。その一方で、「購入した住宅に実際に住もうとする純粋な買い手に対しては、(市場は)ますます多くの物件を供給するだろう」と語る。

北京での締め付けにより、その狙いどおりかどうかはともかく、不動産投資家の目は北京以外の地域に向かっている。

あるテレマーケティング業者は、最近の電話での勧誘で、北京近郊の都市プロジェクトを熱心に勧めた。そのなかには、地震が多く環境汚染の点でも評判の悪い唐山市も含まれている。

「大都市における当局の姿勢が厳しくなるほど、多くの取引は中小規模以下の都市へと押しやられていくだろう」と豪ウェストパック銀行は先月20日付けの書簡で指摘した。

もしそうなれば、北京、上海、深セン、広州といった大都市における住宅取引はいくぶんか沈静化し、投資資金は、そこまで規制の厳しくない中小都市へと向かうことになる。

北京に隣接する河北省雄県の不動産業者は3日、営業終了時間を繰り上げた。新経済特区計画によって急激な住宅ブームが起きることを防ぐため、中国政府が不動産販売の一時停止を命じたためである。

昨年、中国における新規融資の39%を占めた住宅ローンが大幅に減少することは想定されていない。

中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は先月、住宅ローンは今年も比較的ハイペースの伸びを維持するだろうと述べ、家計債務についてある程度寛容な姿勢を示唆した。周総裁は、住宅ローンは単に不動産取引だけでなく工業部門のサプライチェーン全体に影響を与える、と指摘している。

公式データによれば、不動産部門は昨年の中国GDP成長の6.5%を占めている。だが、不動産市場は建設や銀行、金融といった部門も牽引するため、総合的な貢献度はこの数字よりもはるかに大きいと指摘する声が多い。

(翻訳:エァクレーレン)