業界地図が塗り変わると
何が変わるのか

 5月19日付けの日経新聞に楽天トラベルの国内旅行取扱額が2379億円となり、それまで業界2位だった近畿日本ツーリストと3位の日本旅行を抜いて、JTBに次いで業界2位になったという記事が出ていた。

 これは旅行業界を知る人にとっては結構衝撃のニュースである。

 というのも、これまで旅行業界と言えば、JTBをリーダーに近畿日本ツーリストや日本旅行、阪急交通社、東急観光などの総合旅行代理店というのが王道で、HISのように海外の航空券主体あるいは楽天トラベルのように国内の宿泊主体という代理店は、ニッチプレーヤーで旅行代理店としては一流ではないと思われていた。

 ところが数年前に、海外旅行の取り扱いではHISがJTBに次いで業界2位にのし上がり、総客人数だけ取ればHISが1位なってしまった。そこへ今回の楽天トラベルの国内2位のニュースである。

 明らかに業界地図が塗り変わっている。地図が塗り変わると何が変わるかと言えば、業界のルールもっと正確に言えば競争のルールが変わるのである。

HISは競争のルールを
非価格要因から価格に転換した

 これまでの旅行業界の競争のルールは、全国あるいは営業地域においてどれだけたくさんの店舗を構えて、そこに営業社員を配置し、手厚いサービス体制を敷けるかということであった。

 また、航空会社や鉄道会社の切符販売の手数料、あるいはホテルや旅館の客室販売手数料だけでは利益が上がらないために、JTBの「ルック」に代表される自社主催のパッケージ旅行の企画販売なども行っていた。そのため全国に幅広く店舗網を持つJTBが業界リーダーで、それに次ぐプレーヤー達も多かれ少なかれ、JTBと同様の資源配分で事業展開していた。