合併による再編が進んだ製薬業界にあって、未上場で独自路線を貫き、創業126年目を迎えた独ベーリンガーインゲルハイムは異色の存在だ。しかし、売上高は日本の武田薬品工業と同程度の世界13位に甘んじているうえ、主力薬の特許切れで売上げ減少が見込まれる。ふたたび成長軌道に乗れるのか。
(聞き手/ダイヤモンド社書籍オンライン、柴田むつみ)

――東日本大震災に伴う被害状況は?

「震災後も日本の拠点は維持。<br />新薬の創出に邁進する」<br />ベーリンガーインゲルハイム<br />アンドレアス・バーナー会長 インタビューアンドレアス・バーナー
(Andreas Barner)
1953年ドイツ生まれ。ドイツフライブルグ大学で医師博士号、スイス連邦工科大学で数学博士号を取得。スイス・チバガイギー(現ノバルティス)を経て92年に入社。99年に医薬研究開発担当取締役、04年に取締役会副会長、09年に取締役会会長に就任

 短期的には、物流が寸断されたことなどの影響はある。しかし、長期的には、日本は必ず震災のマイナス影響を取り戻せると思う。

――日本の本社を含め、拠点を移転する予定はないか。

 まったくない。本社機能を置くには東京が最適として、兵庫県川西市から(2008年に)移したばかりだ。移転はありえない。

 一般用医薬品をつくる福島工場(福島第一原子力発電所の放射能漏れの影響で操業停止中)の生産分は、外部に委託する。福島工場の従業員は、山形、成田(千葉県)などの工場で受け入れる。日本にあるすべての研究、生産拠点は重要な存在で、今後も維持する。

――全社業績に目を転じると、昨年の売上高は127億ユーロ(約1.4兆円)と前年比1%減。今後も主力薬の特許切れによる減収が見込まれる。将来の成長戦略は?

 革新的な新薬を投入していく。

 すでに日本を含め発売を開始している心房細動患者の脳卒中予防薬「プラザキサ」は、この分野で50年ぶりに出た新薬で、(脳卒中の)発症を抑制する効果が極めて高い。

 開発候補薬も充実している。すでに世界数カ国・地域で承認申請中の2型糖尿病治療薬「リナグリプチン」(5月2日米国で承認済み)のほか、抗がん剤やC型肝炎治療薬の開発が進行中だ。