4月12日、人手不足が深刻化しながら、労働者の賃金上昇の歩みが鈍いという「パラドックス」が発生している。写真は東京・秋葉原、1月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 12日 ロイター] - 人手不足が深刻化しながら、労働者の賃金上昇の歩みが鈍いという「パラドックス」が発生している。

 大幅賃上げ要求に消極的な労働組合のスタンスを批判する一部の識者からは、新たな賃上げ交渉システムの構築を求める声も浮上。鈍い賃上げの下で節約心理が継続するなか、足元では大手小売業が値下げを実施、デフレ方向への「逆回転」現象を懸念する声も出始めた。

労組が格差縮小に軸足移す

 中堅中小の金属・機械産業の労組、JAM(ものづくり労組)の五味哲哉企画部長は、景気や経営状況の先行きが不透明な中で、ベアが少しでも実現したのは、労働組合が健闘した結果だとの見方を示す。

 しかし、人手不足が進行しながら、賃上げ率が昨年実績に届かない現状に「違和感」を示す声もある。日銀の黒田東彦総裁は11日、参院財政金融委員会で「人手不足の割に賃金の上がり方がやや弱い」と指摘した。

 背景の1つに、今年の労働組合の賃上げ方針に関する転換がある。

 連合は今年の春闘方針で、中小企業雇用者、非正規雇用、労働組合のない職場で働く雇用者の処遇改善を通じた格差是正を標ぼう。同時に正社員の賃上げ率要求を昨年並みにとどめた。

 その結果、3月31日時点で連合がまとめた今年の春闘結果によると、正規社員の賃上げ率は2.05%と昨年同時期の2.09%を小幅ながら下回った。