「世界でも最も危険な指導者になる」

 前出のガートナー医師も同様の懸念を示す。

「現実と空想の区別ができない妄想症のため、相手が攻撃を仕掛けてくると勝手に思い込み(現実は違うのに)、“想像上の敵”に向かって攻撃するかもしれない。このような人物に核のボタンを握らせるべきではないと思います」

 さらにトランプ氏の怖さはそれだけではない。豊富な診療経験を持つベテラン精神科医で心理学者のガートナー医師は、トランプ氏は非常に稀で深刻な「悪性の自己愛性人格障害(MNPD=Malignant Narcissistic Personality Disorder)」ではないかと推測する。MNPDは主にナルシシズム(自己愛性)、パラノイア(偏執病)、反社会性、サディズム(他人を傷つけて喜ぶ)の4つの要素を持ち、治療はほぼ不可能だという。

「パラノイアは移民やマイノリティへの侮蔑発言やメディアへの敵視などに現れ、反社会性は人々の権利を侵害したり、嘘をついても自責の念がまったくない所に現れています」

 MNPDという病名を最初に使ったのはナチスドイツの迫害から逃れた心理学者のエリック・フロム博士で、1964年にヒトラーなどファシズム指導者の精神構造を解明するために考え出した。そのため、MNPDは「ヒトラー型の人格障害」とも呼ばれているそうだ。

 ガートナー医師はこう続ける。

「これまで多くの人格障害患者を診てきたが、トランプ氏のケースは“最悪の最悪”と言ってよいでしょう。普通のNPDなら、問題はあってもなんとか大統領として4年の任期を全うできるかもしれません。でも、彼は悪性のNPDですから、それよりはるかに病的です。パラノイドで反社会的で妄想的で、現実と空想の区別ができない。精神医学の見地から言っても非常に危険です。たとえば、精神医学の研究所で“世界で最も危険な指導者をつくる実験”をしたとしても、彼以上の危険な“人格”をつくり出すのは難しいでしょう。彼は意図的に混乱をつくり出し、人を傷つけることに喜びを感じているのですから」

「トランプ解任」を求める動き

 にもかかわらず、トランプ大統領は今でも40%前後の支持率(4月11日のギャラップ調査で41%)を維持している。それについてガートナー医師は、「全ての人を常に騙すことはできないが、一部の人を騙すことはできる」というリンカーン大統領の言葉を引用しながら、「だからこそ、彼の危険性についてより多くの人々に知ってもらわなければならない。それを行うのは私たち精神科医の責任だと思っています」と話す。

 ガートナー医師は2月半ば、他の精神医療の専門家と一緒に「警告義務の会」(DTW)を結成した。DTWはトランプ大統領の人格障害や危険性についての情報をメディアや政治家に提供したり、憲法修正第25条を適用して職務不能を理由に解任を求める署名運動を行ったりしている。3月末の時点で3万人を超える精神医療の専門家が署名したという。

 第25条には「職務不能を理由に大統領を解任し、副大統領を代理に据えることができる」と規定されている。具体的には、「副大統領と閣僚の過半数が“大統領は職務上の権限と義務を遂行できない”と判断した場合、副大統領が直ちに職務を遂行する」というものだ。