ただ結局のところ、やってきたのは1テーマだけだと最近気づいたんです。

 表現手法は違えど、僕は“上手に生きられない人”の物語しかやってないんです。逆にスーパーヒーローが世界を救う話は、今後もやらないと思います。なぜかって、(世界観や気持ちが)分からないですから。

 やるならゴジラをやらせて欲しい。ゴジラは上手に生きられない人間を象徴した怪獣なので(笑)、とても人間的悲哀があると思っています。

【法則2】時代の流れを常に意識する 

――時代が求めるテーマをどのように意識されていますか。一般に、近年の人気映画のテーマは、コメディ→純愛→悪、と変化してきたと言われます。

 映画製作は1~2年の長いリードタイムがあるので、時代の大きな流れは意識せざるを得ないですね。

 最近の世間の雰囲気はと言えば、どうしようもない閉塞感や悪意が渦巻くなかで笑ってごまかしていた2008、2009年があって、それでもどうにもならなかったリーマンショック以降があった。そこに向き合う、立ち向かうというのは、『悪人』『告白』における自分のテーマでした。 

 『悪人』『告白』を終えた2010年に、今後は上を向いて歩いていくしかないから、原点回帰でポジティブなテーマや家族、そして日本のあり方を問う作品が求められるだろうと思って『モテキ』(※5)、『friends もののけ島のナキ』(※6)、『宇宙兄弟』(※7)を準備し始めました。

 そんな状況の中で、3.11(東日本大震災)が起こって、もはや閉塞している場合じゃなくなった。もう自分たちの足で立ち上がって生きていくしかない。偶然なんですが、前述した3つの作品の方向性と現代日本のテーマはマッチしていると思います。

 ただし震災後は特に、ある振り切ったもの、別世界に連れて行ってくれるようなものが求められるんじゃないか。それがエンタテインメントにできる数少ないことなのでは、と思っています。だから娯楽として堂々としたものを作っていきたいと、今は思っています。

※5『モテキ』9月23日(金・祝)公開:原作はイブニング(講談社)に連載された久保ミツロウ作の同名漫画。森山未來主演。突然モテ期が訪れた恋愛下手な男が、恋に人生にエロスに煩悶・妄想・奔走する。。。

※6『friends もののけ島のナキ』12月17日公開(3D2D同時公開):浜田広介作の童話「泣いた赤おに」をベースにした日本オリジナルの3DCGアニメ。監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴。香取慎吾、山寺宏一、阿部サダヲらが声の出演。不器用な赤おにのナキと、もののけ島に迷い込んだ赤ん坊の交流を描く。

※7『宇宙兄弟』2012年春公開:原作は、週刊モーニング(講談社)に連載している小山宙哉作の同名漫画。小栗旬、岡田将生主演。幼い頃ともに宇宙飛行士になる約束をした兄弟。15年後、約束通り宇宙飛行士になった弟と、夢をあきらめ会社をクビになった兄。どん底に追いやられた兄が、弟からの唐突な誘いにより再び宇宙飛行士の夢を追いかけ始める。