[イスタンブール 13日 ロイター] - トルコで16日、大統領に実権を集中させる憲法改正案の是非を問う国民投票が実施される。約1世紀前、オスマン帝国の瓦礫の上に現在の共和国が築かれて以来で最大の体制変更がもたらされる可能性があり、影響は国外にも及びそうだ。

近年、トルコが今ほど世界の諸問題において中心的な地位を占めたことはない。シリアとイラクでの過激派組織イスラム国(IS)との闘いから欧州の難民危機、ロシアおよび米国との関係の変化に至るまで、幅広い問題で注目の的となっている。

国民投票を巡る議論は、8000万人の国民を真っ二つに分断し、欧州のトルコ系住民にも余波は広がっている。エルドアン大統領は、トルコ系住民に賛成を呼びかける集会の開催を認めなかった欧州諸国の指導者を批判。大統領反対派の海外在住トルコ人の中には、監視されていると訴える者もいる。

エルドアン氏の熱心な支持者らは、同氏がイスラム教の価値観を呼び戻し、敬けんな労働者階級を守り、空港や病院、学校を建設してくれたと崇拝し、大統領の実権を高めることによってその恩に報いるのは当然だと考えている。

一方の反対派はエルドアン氏について、権力に固執し、造反に不寛容な人物だと見ている。近代トルコの父(アタチュルク)であるケマル初代大統領が築いた世俗主義の土台を葬り去り、民主主義と言論の自由という西洋的価値観からトルコを一段と遠ざけると批判する。

エルドアン氏を支持する65歳のエンジニアは「過去15年間、かつてトルコでは不可能だと考えられていたあらゆることを大統領は成し遂げた。橋や海底トンネル、道路、空港などだ」と指摘し、「大統領の最大の特質は、人々の心に触れることだ」と熱く訴えた。

反対派には、世俗主義を支持するリベラル派や左派寄りのクルド系市民だけでなく、一部の国家主義者も含まれる。彼らから見れば、エルドアン氏が実権を握るとトルコは存亡の危機に立ちかねない。

61歳の主婦は「彼は共和国とアタチュルクの遺産を破壊しようとしている。賛成派が勝てば、私たちは混乱に陥る。彼は国民の半数の大統領でしかなくなる」と語った。

<ワンマン体制>

エルドアン氏は10年以上にわたり首相を務めた後の2014年、儀礼的な立場でしかなかった大統領に就任した。以降も強烈なパーソナリティで政治を支配し続け、より強大な権力を握ることへの野心を隠してこなかった。

同氏は昨年7月のクーデター未遂後に起こった愛国主義の波に乗り、ISやクルド系武力勢力のほか、外国の後ろ盾を得て政権転覆を狙う内部勢力からの脅威に対抗するため、トルコには強い指導体制が必要だと訴えてきた。

クーデター未遂の2週間後の世論調査では、エルドアン氏の支持率が過去最高の3分の2程度に上昇した。しかし最近の調査によると国民投票は接戦となりそうで、13日に公表された2つの調査では賛成が半数を辛うじて上回るにとどまっている。

世論調査機関によると「隠れ反対派」もおり、その数は把握しにくい。彼らは従来、与党の公正発展党(AKP)を支持してきた層だが、エルドアン氏の独裁的性質に懸念を抱いている。

AKPの重鎮であるダウトオール前首相の首席顧問を務めたEtyen Mahcupyan氏は13日の新聞で、反対票を投じる意向を明らかにした。

同氏は、憲法が改正されれば権力をほしいままにできる「ワンマン体制」が誕生すると警鐘を鳴らし、AKP党員に反対票を投じるよう呼びかけた。

エルドアン大統領は国民投票に向けた運動で、野党党首の失言に焦点を当て、大統領の信奉者から拍手喝采を浴びている。しかし憲法改正案の詳細の説明にはあまり時間を費やしていない。

世論調査会社GeziciのMurat Gezici代表は「有権者の8割はイデオロギーに基づいて投票する。つまり内容も分からずに投票するということだ」と指摘。「仮に賛成派が勝った場合、彼らはその後の経験を通じて何に賛成したのかを知ることになるだろう。彼らが問題に向き合うのはそうなってからだ」と語った。

(Nick Tattersall、Humeyra Pamuk記者)