一つは、コストの問題である。

 化石燃料の輸入額は2008年で23.1兆円(GDPの4.6%)と非常に高い。しかも、その輸入額が増えれば増えるほど、貿易収支(2.1兆円、GDP比0.4%。太陽経済の会調べ)は悪化している。現に、今年度に入って、震災後の輸出の落ち込みに加え、原油等の高騰と輸入急増のために、貿易赤字が拡大する傾向がはっきりと現れている。これこそ国富の流出だ。

 二つめは、温暖化への対応だ。

 目下のところ忘れられがちだが、温暖化対策は消え去ったリスクではない。CO2排出量を考えれば、化石燃料を使い放題というわけにいかない。

 ではどうするか。方策として、「自然エネルギーの拡大」と、「省エネルギー・節電の深化」にたどりつくのである。

大規模停電を起こしかねない 
現体制で安定供給は確保できるか

 まず、「原発を減らすと停電が起きる」、「自然エネルギーを増やすと停電の恐れがある」と、脅しのように繰り返される議論を見てみよう。これは、“電力の安定供給”とはなんぞや、という基本原則から改めて冷静に考える必要がある。

 2003年に東電の原発17基が一斉に停止したときも、2007年に新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が停止したときも、そして今回も電力需給が厳しくなった。歴史を踏まえて言えば、日本のような大規模集中型の電源体制が突然に一斉に止まるリスクは非常に高い。1999年には、関西電力で変電所のトラブルにより、京都で大停電が発生したこともあった。“安定供給”といったときに一番避けるべき停電が、一極集中の構造のために起きてきたのである。

 なおかつ、今回の震災で実施された計画停電は、変電所単位でボツボツと止めるので、公共インフラである病院や信号など、本来は優先度が高いはずの設備もまとめて電気を止められるという、とんでもない事態が起きた。もっと小規模で分散型の電源体制にすることも、真剣に検討すべきである。

 2011年3月11日、日本は明治維新、太平洋戦争敗戦に次ぐ“第三のリセット”の日を迎えた。震災による数多くの犠牲はもとより、福島第一原発の事故が私たちに与えた恐怖や放射能汚染という厄災を捨て石にしてはならない。

 未来に希望を持てるエネルギー政策・原子力政策とは何か、今こそ見直すときである。