経営 X 人事

「新卒社員の3割が3年で辞める」はなぜ30年間変わらないのか

 この結果から分かるのは、「キャリア成長が望めない」「残業・拘束時間が長い」「企業の方針や組織体制・社風などが合わない」など、採用選考の段階で学生に企業の内実をきちんと伝えきれなかったことが退職の大きな理由になっていること。これは明らかに、企業側の「情報開示」の姿勢に問題がある。

 特にインターネットによる就職情報サイトが普及したことで、より顕著になった。就職情報サイトに掲載されている情報は基本的にPRであり、いくら眺めてもその企業の良いところしか見えてこない。企業側が良いところしか出していないのだから当然だが、そのような状況では「自分に合った優良企業」を探し出すことは難しい。

 仮に就職情報サイトで同じように見えても、A社は経営がしっかりしていて社員がイキイキと働いているホワイト企業で、B社は職場にハラスメントが蔓延していて、仕事にやりがいを感じられずに社員がどんどん辞めているブラック企業かもしれない。さらには相性の違いなど、実際に会って本音で話し合わなければ分からないことが、他にもたくさんある。そのような事実を学生に知らせなくて、本当の意味でのマッチングなど望むことはできない。

 人材不足が深刻化する中、企業は学生のエントリー数を増やす必要がある。そのために知られたくない事実を隠したうえで学生のエントリーを煽り、採用選考を進めていくことになる。企業側が情報開示に関してこのような姿勢を取る限り、いつまで経ってもミスマッチが解消されることはないだろう。

 ところで、下記の「新聞広告」を読んだとき、あなたは何を感じるだろうか。

求む男子。至難の旅。
わずかな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証無し。
成功の暁には名誉と称賛を得る。
アーネスト・シャクルトン

 これは、三度にわたりイギリスの南極探検隊を率いた極地探検家のアーネスト・シャクルトンが、南極探検のメンバーを募集するために出した伝説の新聞広告のコピーだと言われている。今ならとても考えられない内容であり、ほとんどの人はエントリーすることもないだろう。しかし、当時はこの小さな求人広告に対して、実に5000人もの応募があったという。あえて、ネガティブな情報を出しているのに、である。このような情報開示の持つ意義と効果・効用を、経営者や人事担当者は、いま一度、考えてみる必要があるのではないだろうか。

(4月25日更新予定の次回に続く)

※次回は採用の「ミスマッチ」を起こさないために、どのように人材を採用し、定着させていけばいいのかを考える。

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