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「週刊文春」編集長の仕事術
【第33回】 2017年4月24日
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新谷学

「シャブ&飛鳥」に「不倫inニューヨーク」…記憶に残る絶妙な「コピーの極意」とは?

つねに世間を賑わせている「週刊文春」。その現役編集長が初めて本を著し、話題となっている。『「週刊文春」編集長の仕事術』(新谷学/ダイヤモンド社)だ。本連載では、本書の一部を抜粋してお届けする。(編集:竹村俊介、写真:加瀬健太郎)

「見出しがすぐに浮かぶ企画」はいい企画

 企画の良し悪しを見極めるひとつの大きなポイントは「見出しが付くか付かないか」だ。「こういう話がありまして……」とデスクが説明しているのを聞きながら、私がパッと見出しを思いつくような企画にはしっかりした切り口がある。「この人はこう見えて実はこんな人でした」というところに意外性があったり、どこかに引っかかりがあれば、タイトルはそこをスパッと切りとる。タイトルがすぐに付くのは、いい企画だ。

新谷学(しんたに・まなぶ)
1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業。89年に文藝春秋に入社し、「Number」「マルコポーロ」編集部、「週刊文春」記者・デスク、月刊「文藝春秋」編集部、ノンフィクション局第一部長などを経て、2012年より「週刊文春」編集長。

 では、いいタイトルとは何か。ここで私のタイトルの付け方について述べたい。

 まず、説明的なタイトルはよくない。中身に自信がないときほど、タイトルで説明したくなる。「この記事のおもしろさをわかってもらえるかな」と不安になると、いろんな要素を盛り込みたくなる。タイトルで説明して、リードで説明して、それでも不安だとサブタイトルを付けて説明する。一生懸命「こんなにおもしろいことをやっているんだ」と説明したくなるのだが、本当におもしろければ、くどくどと説明しなくても伝わる。直球でビシッと、例えば「ユニクロ潜入一年」「シャブ&飛鳥の衝撃」など、インパクトがあるタイトルが生まれる。

 私は、小学生の頃からあだ名をつけるのが得意だった。あだ名をつけるには、少し残酷な言い方だが、みんなが何となく感じているけど、相手にとっては触れられたくないところをピンポイントで突いて、極大化することだ。そういうあだ名は定着するのだ。その人の核心、本質、しかもあまり触れられたくない部分を、ビシッと突く。そして、そこをいかに広げて大きくしていけるか。この感覚は見出しをつけるときにも役立っているように思う。誤解のないように言っておくが、「弱いものイジメ」はダメだ。嫌な先生とか、いつも威張っていて感じが悪い相手につけるのが基本である。

 また、タイトルは短いほうがいい。週刊誌だと、単純に短いほうが字が大きくなる。中吊りでも、新聞広告でも、目次でも、短いほうが物理的に大きくなるのだ。なるべくタイトルを短くして、ダーンとでっかい活字でびっくりしてもらう。

 タイトルは慣れていない人がつけると、ものすごく「おさまりのいい」ものになりがちだ。「◯◯の舞台裏」「◯◯の全真相」「◯◯の素顔」「◯◯の正体」……だいたいみんなが見たことのあるようなものになってしまう。私は、なるべくそういう言葉は使わないようにしている。

 もちろん、全く使わないわけではない。「正体」「全真相」といった慣用句は、とっておきの場面でこそ使う。本当の意味での全真相だったり、本当にみんなが正体を知りたいと思っている人の正体に直球で迫るときには「〇〇の正体」と大きな活字で打つ。

 「ワイド特集」の小さい記事も、あまり見たことのない見出しにしようとひとつずつ考える。例えば、元巨人の野村貴仁さんに週刊文春の記者が取材した。ボクシング経験のある記者はミットを持参した。野村さんは俄然興味を示し、即席のスパーリングが始まった。その際、野村さんは「ワンツー、スリー」でわざと記者のボディを打った。もちろん本気ではないが、記者の報告を聞いた私はすぐに「野村貴仁が本誌記者のボディに一発」というタイトルを思いついた。他にも「ザッピング二股愛」という見出し。これはジャニーズのタレントがテレビ局の女子アナ二人と付き合っていた疑惑について報じた記事だ。「6チャンネルから8チャンネルにザッピングしちゃったのかな」と思い、こういうタイトルにした。スキャンダル記事でも相手を断罪するのではなく、こうしたちょっと笑えるような要素を意識的に入れている。

「声に出して読みたい」見出しを

 また、花田さんがよく言っていたのは「声に出して読んでみて気持ちいいのがいいタイトルだ」ということだ。リズム感、語感のいいもの。見た目のインパクトに加えて、声に出したときの通りのよさ、響きのよさも大切だ。「シャブ&飛鳥」は響きがよかったから人口に膾炙した。ちなみに「ゲス&ベッキー」は「シド・アンド・ナンシー」から付けたものだ。

 酒のつまみになるタイトルかどうかも意識する。「ユニクロ潜入1年かよ」というふうに話題になりそうかどうか。今、企業の広報の人に会うと、よく「うちには潜入してないですよね?」と聞かれる。そこで「うちは張り込み、直撃だけじゃなくて、潜入もありますから」と冗談で言ったりすると「えーっ」と驚かれる。

 「森喜朗79歳。何がめでたい」もデスクの意見をそのまま採用したのだが、「いつまで地位にしがみつくのかね」と酒場のネタになる。普通に「森喜朗の高笑い」とやるよりも「何がめでたい」とやったほうが「国民はめでたくねぇよ」とツッコミたくなるだろう。都議会自民党の内田茂氏には「都議会のドン」のレッテルを貼った。デスク時代には鈴木宗男さんのキャンペーンを続けるなかで、「疑惑のデパート」というタイトルを思いついた。それを辻元清美さんが国会で「疑惑のデパートというより総合商社だ」と発言して、一気に広がった。

 ネタの先、タイトルの先に広がりがあるかどうか。魅力のある「色っぽいタイトル」をつけたい。ちょっと気になったり、引っ掛かったり、二度見しちゃったり、「あれっ」と思われるようなタイトル。そういうタイトル付けを心がけている。

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新谷学

1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業。89年に文藝春秋に入社し、「Number」「マルコポーロ」編集部、「週刊文春」記者・デスク、月刊「文藝春秋」編集部、ノンフィクション局第一部長などを経て、2012年より「週刊文春」編集長。

 


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