――他に自身の人生に影響を与えた人物は誰でしょうか。

 パッと思い浮かぶのは三島由紀夫ですね。本も好きだけど、生きざまがカッコいい。近代をどう否定しようかと思ったら、三島由紀夫的な選択を取らざるを得ない、そう考えても実際に行動を起こす人はあまりいない。しかも基本は芸術家です。

 エジソンにも影響を受けていますね。「発明+アート」という意味では、今風にエジソンしているのが僕の活動に近いです。最近だと、コンピューターでつくった光の3次元の分布を集積させることで空気分子をプラズマ化して像を描くとか、空間のある一点にだけ音を集めるとか。

 エジソンの発明も当時の人からすると、音声を再生する装置はじめ、何をしているか訳が分からなくて、彼は“魔術師”とも呼ばれていました。その意味では発明家と芸術家に差はほとんどない。われわれの聴覚や視覚をどうアップデートするかを試みていて、人類はこの百年ぐらい、その枠組みを改め続けてきました。

 もう絶版ですが、マシュウ・ジョセフソンという人が書いた『エジソンの生涯』という伝記があって、エジソンの研究所を訪れていた人やその日常などが描かれています。それを見ると明らかにイノベーション(技術革新)しか起こらない環境があるんですよ。われわれがイノベーションと呼ぶものを作る環境のヒントは全てそこにあるのに、なぜそれを振り返ることなく、イノベーションと言えるのか全く理解できない。

 あとは映画監督のスタンリー・キューブリック。映画の「フルメタル・ジャケット」がすごく好きで、あれはモダニズム(近代主義)の否定なんですよね。

――信彦氏からは「ニーチェを読まないやつとは話さない」と言われていたそうですね。

 それで哲学書も読み始めて、10代のころはニーチェやジョン・ロックといった哲学者の本も読んでましたね。ロックには衝撃を受けました。西洋が日本語で表現できない概念を発明してきたから、容易に言葉にできないのだと思わされたからです。