前進したことには違いないが
まだスタート地点に立っただけ

──では連合側が勝ったと。
 
 決して勝ち負けではありません。労使関係は本来、どちらが勝ったとかいう話ではないと考えています。互いが納得しなければ健全ではない。そういう意味では今回ギリギリのところで合意できたのは健全な労使関係が築いた結果だと考えています。

 それよりも、100時間などとあおっておいて、それが決まってしまえば本質的な部分をほとんど報じなくなるという報道のあり方には疑問を感じています。論点は特例の上限だけではないのです。失礼な言い方ですが、マッチで火を付けたのなら、きちんと最後まで報じてポンプで火を消してほしいものです。

 先日も労働弁護団の先生とお話をしていたら、ある方のIT企業に勤めている夫が、「なんだ、100時間働かなきゃいけないのかぁ」とつぶやいたと言うんです。みんな100時間働かなきゃと誤解しているわけです。今回の会議で何が決まって、企業、そして働いている人は今後どうすべきなのか、正確に伝えていくことこそが大事なのではないでしょうか。

 また、法の抜け穴的な部分ばかりをクローズアップするのもいかがでしょうか。ブラック企業たちに対して誤った気づきを与えてしまい、結果、働いている人たちに負担がかかることにもなりかねないからです。本来、そうした悪しき常識を持つ企業や、36協定を結んでいないような企業の問題を取り上げて断罪していくべきでしょう。

──とはいえ、成果を収めることができて前進ですね。

 前進したことは間違いありませんが、まだスタート地点に立っただけですよ。そもそも今回は実行計画がまとまっただけで、この後、審議会と国会の議論を経なければならないからです。順調にいって労働基準法の改正の施行は2019年かなという感じですから。

 また大企業の認識は深まり、働き方の改革を進めなければならないと考えているところが多いようですが、中小企業、特に組合がない企業などは「36協定って何ですか?」という認識の所も多く温度差が激しい。

 36協定を結んでいない企業は4割に達していると言われていますが、そういう企業が残業していないかというとそうではない。だからまずは36協定をきちんと結ぶよう、そして限度時間は月間45時間、年間360時間の範囲で収めるよう、世の中への理解活動もやっていかなくてはいけないと思っています。

──果たして働き方は変わり、残業時間は減るのでしょうか。

 せっかくスタート台に立ったのですから、今後、魂を入れ実効性のあるものにしなければなりません。連合がずっと主張し続けてきたことですし、今後も旗を振り続けます。