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アメリカの心配をする前に、日本の金融規制は適切なのか?

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第85回】 2009年6月24日
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◆リスクの本体は温存されたが、幾つか見直しが行われた

 6月17日、アメリカ政府は金融規制改革案を発表した。今般の金融危機の発生をうけて、危機の再発を目指した規制案であり、「大恐慌以来の改革」との触れ込みだ。決定・実施に向けては、議会・業界との調整が必要であり、このまま決定するかどうかは不確定だが、米政府の現在の考え方が分かる。

 主な項目としては、(1)FRBの監督対象を証券・保険などに広げる、(2)預金金融機関(銀行とS&L両方)を監督する新機関を創設、(3)金融消費者保護庁の創設、(4)規制当局間の連携を図る金融サービス監督協議会を創設する、といった内容が報じられている。また、過度なレバレッジを使った複雑な取引が金融システムを危うくしたとの反省から(5)自己資本規制の強化、(6)デリバティブの取引所・清算機関の整備なども推進する方向のようだ。

 金融業界のビジネスのやり方にはそれなりの影響を与えるだろう。高いレバレッジを使ったトレーディング益中心のビジネスから、仲介手数料などにビジネスの重点が移るのではないかとの憶測もある。全体に対して、筆者は、将来の危機を回避するための規制としてはまだまだ不十分だと感じる。投資銀行的金融業は現在のアメリカの資本が世界で稼いで回る主力手段でもあり、また金融業界の政治的影響力も大きいから、業界のいかがわしさの本体には手を付けられなかったのではないか。

 具体的には、社員・経営者の報酬の問題への対処が不十分であることと、預金受け入れとハイリスクなビジネスとの遮断が不十分であることの二つの問題が残ったことが問題だ。このおかげで、今度は商業銀行に寄宿した「金融ギャンブラー」たちが、預金をリスクにさらして上手く行ったら成功報酬をふんだくる、というビジネス・モデルが可能なままだ。

 もっとも、次の本格的なバブルの発生までには少なくとも何年か余裕があるだろう。アメリカの心配をする前に、日本の金融規制が適切なのかを、今回のアメリカの規制も参考に振り返っておきたい。

 アメリカ政府の今回の金融規制案から透けて見える、今回アメリカが「懲りた」と感じたものは、(1)銀行と異業態(証券・保険・ノンバンク)とのリスクの連鎖、(2)複雑な金融商品による消費者保護の不十分、(3)大きすぎるレバレッジによる金融機関経営の不安定、(4)カウンター・パーティーリスクの連鎖、といったことだろう。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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