経営×物流

いまここにある”宅配危機”の裏側~ヤマト運輸の宅配総量抑制

「カーゴニュース」記者座談会【1】 

そんなにアマゾンが悪いのか?

ヤマト運輸労組の中央討論会では現場の切実な声が…

A まずは、ヤマト運輸の問題を採り上げてみたい。今回の一件は一般メディアでも採り上げられ、「宅配の危機」が大きな社会問題ともなった。簡単に経緯を説明してもらえるかな。

B ひと言で言うと、荷物の急増で現場がついにパンクしたということだ。とくに昨年末の窮状を受けて、労働組合から現場社員の働き方改革と待遇改善の要求が沸き起こった。

 その結果、3月16日に妥結した春闘交渉で、4月24日から再配達の締切時間を20時から19時に変更し、6月からは配達時間帯の指定枠を変更することなどが決まった。具体的には「12~14時」の指定枠を廃止し、再配達が集中する「20~21時」を「19~21時」にして幅をもたせる。

 さらに10月からはインターバル制度を導入し、前日の退社から翌日の出社まで最低10時間の休息時間を確保するなどの改善策がまとまった。

C 宅急便サービスの見直しは今にはじまった議論ではない。通販荷物の急拡大に対して労働力不足は年々深刻化しており、とくに年末繁忙期における現場の疲弊は、ここ数年、労働組合の大会でも必ず話題に挙がっていた。何とかしなければならないという認識は以前から経営陣にもあったはず。

 ただ、ここに来て業績にも影響が出始めるなど、ついに臨界点を超えてしまった。通販荷物の急増に加え、2015年に行った宅急便商品のリニューアルが現場への負担をさらに増すなど、様々な要因が重なってしまった印象もある。

A アマゾンに代表される通販荷物の増加に労働力の調達が追い付かず、ついに決壊してしまったということだ。その意味では、今の物流業界を象徴している出来事だと言えるね。
 
D アマゾンに対して運賃の値上げという話が取り沙汰されているが、「撤退」という選択肢はなかったのか、という気がする。 

 ただ、かつてヤマトが三越の配送から撤退した時と比べると、今回のアマゾンはボリュームが違う。ヤマトは近年、羽田クロノゲートに1400億円、厚木、中部、関西の各ゲートウェイにもそれぞれ200億円という巨額な投資をしている。当日配達や省人化のための設備投資費がかさみ、損益分岐点が高くなってしまったのでないか。そのため、稼働率を落とすことができず、撤退という判断には至らなかったのではないかと推測できる。

E アマゾンについては佐川急便は数年前に撤退している。このところネガティブな報道が多かった佐川だが、今回のヤマトの問題が起きてから、「佐川急便の判断は賢明だったのでは」という意見も聞かれるようになってきたね。

 ただ、アマゾンは確かにシビアな荷主だが、圧倒的なボリュームも持っているし、これからも伸びていくだろう。この荷主にどう対応するかは経営的にも非常に難しいところだ。

C 確かにアマゾンは厳しい荷主かもしれないが、一方で佐川が運賃交渉で決裂した状態からヤマトが引き継いだ経緯もあり、それほど悪い条件で受けているわけではないとの話も聞く。現場にとってみればアマゾンの荷物は量が多く目立つため、槍玉に挙げられる象徴的な荷物となってしまっている面もあると思う。

B アマゾンは時間帯指定に遅れると、その荷物の運賃を支払わないといわれている。だた、敢えてアマゾンを悪者にすることで他の運賃の安い荷主をけん制している側面もあるのでは?

C アマゾンは日本の流通市場に対する「黒船」とのイメージが強い。実際、通販市場に「送料無料」の概念を浸透させた張本人でもある。アマゾンというわかりやすいヒール役を仕立てることは、消費者に対して宅配業界の窮状を訴えやすい雰囲気づくりにつながったのかもしれない。

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1969年10月の創刊から約40年間「経済の中の物流」という視点から一貫した報道を行っている物流業界専門紙。物流報道の中に“荷主”という切り口を持った媒体として評価されている。主な内容は荷主企業の物流動向、行政の物流関連動向、トラック、倉庫、鉄道、海運、航空など物流企業の最新動向、物流機器、WMSソフトなどの関連ニュース等。週2回発行。


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1969年10月の創刊から約40年間「経済の中の物流」という視点から一貫した報道を行っている老舗・物流業界専門紙『カーゴニュース』とのコラボレーション連載。

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