ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

残存する「Japanisation」でグローバルに低金利が継続
米国バランスシート調整は日本より早い
――高田創・みずほ証券グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長/チーフストラテジスト

島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]
【第25回】 2011年6月8日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

「Japanisation」の症状の行方

 今年5月に海外投資家との意見交換で北京、ロンドン、ニューヨークを訪問した。なかでもニューヨークでは、年1回の企業金融定点観測のヒアリング調査を、1999年以降、10年以上続けている。

 そこで、2007年来のサブプライム問題を受け、4年間余りストーリーラインとして米国におけるバランスシート調整に伴う問題を、毎年定点観測してきた。

 米国は、2008年のリーマンショックを受けた危機への恐怖を経て、2009年以降は回復プロセスにあるが、その回復ペースは緩やかである。前回ニューヨークを訪問した2010年9月は、バランスシート調整の重さが「Japanisation」(日本化現象)として最も強く意識された局面だった。

 その後、2010年11月のQE2に加え、ブッシュ減税継続などの全面的な政策支援から、2011年に入って一転してJapanisation議論は後退し、市場では危機からの「出口戦略」が強く意識される段階に転換した。

 ただし、5月の訪問で「Japanisation」の症状が各所に残存することを確認した。足下で生じた世界的な金利低下は、欧米で残存するバランスシート調整圧力の反映と考えられる。

米国の利上げは予想以上に先か

 5月の米国出張では、米国のFRBの利上げは市場予想より先ではないかとの印象を抱いた。FRBは2011年6月にQE2を終了する予定であるが、一定期間、FRBは国債保有額を維持し、実際のFFレートの引き上げは、早くても2012年後半まで延びるとの認識に至った。

 また、場合によっては利上げが2013年に延びる可能性も考えられる。すなわち、エグジットへの姿勢は明確化されても、そこからの道程は意外と長いかもしれない。

 今年4月以降に生じた米国長期金利の低下は、以上の時間軸を市場が意識した面が強い。FFレート上昇が早期に見込めないなか、2011年の米国10年金利は4%までは達しないとの見通しを持っている。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト]

しまもと・こうじ/1990年、東京大学卒業、日本興業銀行入社。調査部門で金利分析や経済予測を担当。2000年からBNPパリバ証券で投資調査本部長兼チーフストラテジストとして金融市場予測を担う。日本経済新聞社の債券アナリスト・エコノミスト人気調査の債券部門では06、08年に1位。金融庁の金融市場戦略チームや金融税制研究会、行政刷新会議の事業仕分けなどに参加。

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

⇒バックナンバー一覧