Sue-Lin Wong and James Pearson

[平壌/ソウル 20日 ロイター] - 北朝鮮の平壌空港で飛行機から降りた後も、同国の航空会社「高麗航空」の名称が視野から消えることはない。高麗航空グループは、タクシー事業やガソリンスタンドだけでなく、たばこや炭酸飲料の製造まで手がけている。そのすべてに、機体と同様に、鶴が飛ぶ姿のロゴが記されている。

世界的な孤立を深める北朝鮮を訪れた人々によれば、朝鮮人民軍の傘下にある高麗航空は、ここ数カ月、消費者向け製品事業を本格的に拡大しているという。この国内向けの事業多角化が、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発を理由とする国連の経済制裁に伴い、多くの国際路線を失ったことに関連しているのかどうかは定かではない。

米国政府は核兵器の実験を続ける北朝鮮を罰するため、高麗航空本体に対する国際的な運航禁止を含め、さらに厳しい制裁措置を検討していると米当局者は語る。

だが米国が高麗航空に対してどのような措置をとろうと、他国の同調を求める拘束力を持つわけではなく、中国とロシアの協力が得られなければほとんど効果はないだろう。中ロ両国とも、北朝鮮に対する国連制裁に関して例外規定を設けることを求めてきた過去がある。

「北朝鮮について何らかの形で対処が必要であるという点で米中は合意に達しているようであり、中国が高麗航空に対する制裁に賛成する可能性は確かにある。しかし問題は、ロシアがそうした制裁に同意するかどうかだ」と中国・吉林大学のSun Xingjie准教授は語る。

北朝鮮の当局者が取材に応じることは稀であり、高麗航空からも北朝鮮政府からも、この件についてコメントを得ることはできなかった。

現在、高麗航空が運航しているのは、北京など中国の4都市とロシアのウラジオストクだけである。バンコク、クアラルンプール、クウェートへの運航は昨年停止された。ただし先月、高麗航空はピョンヤンから中国の丹東への運航を追加した。丹東は、中朝貿易における主要な中継地点である。

高麗航空で現在稼働している機体は、ロシア製かウクライナ製の15機で、中国とロシアの給油・整備・修理施設を利用している、と航空関係のデータベースと国連の資料は示している。

昨年入手した運航スケジュールによれば、高麗航空は、平壌と、オラン(漁郎)、ソンドク(宣徳)、サムジヨン(三池淵)を結ぶ多数の国内便を運航している。

秘密主義的な北朝鮮では、企業が収益やコストに関する情報を公開していないため、実施された制裁がこれまでに与えた、あるいは将来的に与える影響を見極めることは不可能である。

だが北朝鮮を訪問した人々によれば、同国の空軍が保有している高麗航空グループは、明らかに事業を拡大しているという。

<タクシーもガソリンスタンドも>

2015年、高麗航空グループは独自のタクシー部門を立ち上げた。平壌市内では、他の国営企業少なくとも8社が運営するタクシーに混ざって、高麗航空のスカイブルーの車両も走り回っている。

平壌各地の店舗では、高麗航空ブランドのコーラ飲料やたばこも販売されている。

高麗航空は昨年後半にソフトドリンク部門に進出した、と北朝鮮への旅行を催行する北京の旅行代理店コリョ・ツアーズのサイモン・コッカレル氏は語る。

1月にはガソリン小売に参入した。「ピョンヤン市内に少なくとも1カ所、恐らく2カ所のガソリンスタンドを保有している」とコッカレル氏は言う。「そう遠くないうちに、他にももっと高麗航空ブランドの商品が売り出されても驚かない」

対北朝鮮制裁に関する違反行為を調査している国連委員会は、2月の報告書のなかで、高麗航空と人民軍空軍のあいだには「境界が存在しない」と述べている。

「この航空会社の資産は軍事目的で活発に利用されている」と報告書は述べている。

「外見は民間航空会社のようだが、実質的には政府によって運営されている」と語るのは、韓国の東国大学校で北朝鮮研究を専門とするキム・ヨンヒュン教授。

国連は高麗航空に対する制裁を実施していないが、禁輸対象商品の密輸への関与を非難している。民間航空機が国外で給油を受ける場合は、北朝鮮に対するジェット燃料の輸出を禁じた国連制裁の対象外となる。国連加盟国は北朝鮮から発送された貨物を検査することを義務づけられており、高麗航空のフライトもその例外ではない。

12月、米国は高麗航空、同社の保有する航空機16機、事務所10カ所を「制裁対象」に指定した。米国市民がこれら実体と取引を行うことが基本的には禁止される。ただし、この禁止措置が、米国民が観光のために同社の航空機に乗ることにまで適用されるかどうかは明示されなかった。

平壌空港の当局者は、国際社会が高麗航空を直接対象とした制裁を強化しようと試みることについては心配していないと話している。

高麗航空の搭乗手続カウンターに立つ税関職員は、「恐れることはない。独自の対抗手段は用意している」と言うが、その詳細には触れなかった。

前出のキム教授は、高麗航空に対する制裁が実施されるとしても、もっぱら象徴的な効果に留まるだろうと話している。

「北朝鮮経済に大きな打撃を与えることはないだろう」とキム教授は韓国語で語った。「高麗航空は(多くの外貨を稼ぐ)『ドル箱』にはなっていない」

(翻訳:エァクレーレン)