皆さんの電力不足に対する不安は払拭できただろうか。そもそも、昨今のように声高に夏場の“電力不安説”が唱えられ始めたのは、いつからか覚えているだろうか。

浜岡停止は英断だが
電力不安を煽った遠因

 私が記憶する限り、菅直人首相が中部電力浜岡原子力発電所のすべての原子炉を停止すべき、と要請した5月6日以降である。この「英断」は評価できるが、過剰な“電気が足りなくなる”キャンペーンはここから始まった。

 東京電力管内に比べて、他の電力会社はもっと余裕がある。そうしたデータも踏まえずに「電力不安説」が広がったのは、明らかに、浜岡以外の原発を止めないためのプロパガンダの様相である。

 浜岡を止め、それ以外を動かすかどうかを判定するにあたって、明確な基準、いわゆるストレステストの基準を示さなかったためである。原発を動かし続けたい人たちも地方自治体の首長も誰もが疑心暗鬼になって、こうした騒動を呼んだわけだ。

 結局、政治的判断と、政策プロセスの失敗に他ならない。場当たり的な判断に惑わされず、合理的かつ現代的な施策を探求してもらいたい。