ペンシルバニア州にあるフレイザータウンシップという町で、四二歳のデニス・ドラム氏が額を撃ち抜かれて亡くなったのは二月二七日、夜十時過ぎのことだった。通報を受けて駆けつけた警察はその場でドラム氏の死亡を確認したが、妻のテレサの証言によると、夫婦でひどい口論をした後、ドラム氏は“自ら額を撃ち抜いて”自殺したとのことだ。

 が、警察はこの証言に疑問を抱いた。疑問は二つだ。

 ひとつは、テレサの警察への通報時間が、周辺の聞き込みでわかった発砲時刻から十一分もかかっていたこと。もうひとつは、テレサが血塗れになった服を洗濯用バスケットに入れ、なおかつシャワーを浴びていたことだ。これは何を意味するのか?

 ひとつめの疑問に、テレサは“動揺がひどく、夫の様子を携帯電話で撮影し、友人に送って助言を仰いでいた”と説明したが、二つ目の疑問を説明することができず、警察は夫の殺害容疑でテレサを逮捕した(翌日に起訴)。

 裁判所に提出された文書によると、夫婦はいずれも“酒癖”がよくなかったらしい。事件当夜の夕食時にも、夫婦は八本のビールを空けていた。そして、すっかりメートルがあがったドラム氏は、妻の手料理にケチをつけた。

「料理がまずい。なんだこの焦げたキャセロールは」

 テレサ被告にも酒が入っていたが、夫のこの一言に激怒し、寝室に銃を取りに行った。公判資料には、このときすでに殺意が芽生えていた、とある。そしてダイニングに戻り、テレサ被告は銃口を夫の額に当て、引き金をひいた。

 ドラム氏はよほど口がおごったひとだったのか、あるいは単にテレサ被告の料理の腕前が並以下だっただけなのかはわからないが、哀れにも、妻の手料理に文句をつけただけでドラム氏は射殺されてしまった。この事件の教訓はと言うと……、女房の料理には文句を言わないこと、だろうか。それとも、料理がまずいと言われても銃口を夫の額に当て引き金を引いてはいけないだろうか。家内がテレサ被告のような女だったら、私はとうに三〇〇〇回くらいは射殺されているはずだが。