[東京 1日 ロイター] - 5月中旬に北京で開催される「一帯一路国際協力フォーラム」に、自民党幹事長や経団連会長が参加する。中国主導で進む新興国インフラ整備プロジェクトに距離を置いてきた政府・与党だが、北朝鮮を巡る情勢をにらみつつ、中国との経済協力関係を進めようとの外交的な意図も見え隠れする。

民間企業側は巨大なインフラ市場への参入チャンスと捉え、保護主義が強まる中で新興国市場における共通ルールの構築に道を開く狙いもある。

<安保面での必要性と、中国覇権主義への懸念>

同フォーラムは中国政府の主催で5月14─15日に北京で開催される。人民日報ニュースサイト「人民網」によると、習近平国家主席が出席し、28カ国の政府首脳も参加。110カ国の関係者、61の国際組織と合わせて1200人程度が出席するという。

シルクロード経済圏構想「一帯一路」のインフラプロジェクト推進で、各国の知恵を集めて協力の道筋を計画するとしている。

日本からは自民党の二階俊博幹事長が参加する。与党関係者の1人は「北朝鮮をめぐる情勢をはじめ、現下の国際情勢を考えれば、日中間の意思疎通は極めて重要」と指摘。中国との関係強化が必要であるとの認識で政府・与党が一致しているとの見方を示す。

また、トランプ米大統領が北朝鮮問題を巡り、中国との連携を強める中、日本としても対中関係における人脈をできるだけ幅広く構築しておきたいとの思惑もありそうだ。

ただ、日本政府はこれまで中国が主導するいくつかの経済的枠組みに対し、慎重な方針をとってきたことも事実。

中国主導の色彩が濃いアジアインフラ投資銀行(AIIB)には参加せず、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉でも、中国の為替政策や資本規制を踏まえて慎重に臨んでいる。  

柴山昌彦・首相補佐官は「日中の関係は、対北朝鮮(外交)においても大変重要な側面を持つ」として、安全保障の視点から一帯一路フォーラムへの参加の重要性に言及しつつも、懸念も隠さない。「AIIBに対する当時の懸念は払しょくされておらず、何よりも西側の超大国である米国が、未だ慎重な姿勢を崩していないこともデメリット」と語る。

<産業界は前向き、需要取り込みとグローバル化維持へ>

一方、榊原定征・経団連会長が参加する経済界では、ビジネスチャンス拡大への期待が大きい。中央アジア、東南アジアに加えて中東やアフリカ、欧州に至るまで広域のインフラ市場は、日本企業にとっても魅力的だ。

経団連では、榊原会長が一帯一路フォーラムに招待されたことについて、大規模プロジェクトに国際協力体制が欠かせず、中国側が日本企業の参加も想定しているためとみている。

また、日本企業側は「世界に保護主義が広がりだす中で、貿易ルールや政策協調という意味も含めて、自由貿易投資環境を整え、グローバル化を各国共通認識として持つことが目的の1つ」(経団連・国際協力本部)という。

この点に関し、自民党の林芳正・税制調査会副会長(参院議員)は、AIIBがかかわり始めた場合、人権や腐敗、環境無視といった問題が出てくれば、(企業が)本来は良いミッションとして取り組もうとしていても独裁政権の力となっていた、ということになりかねないと指摘。

そのうえで「こうした懸念が払しょくできるかということ。アジア開発銀行や世界銀行だけでは圧倒的に資金不足であり、いい意味で競いあうのは悪いことではない」と捉えている。

もっとも一帯一路構想そのものの詳細は明らかではない。具体的なプロジェクトとしてインドネシア高速鉄道やエチオピア・アジスアベバとジブチを結ぶ鉄道の開通、ギリシャ・ピレオス港運営権といった案件が公式発表されているが、日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、構想に含まれるプロジェクト数や金額、受注企業などは、ほとんど情報がないという。

また、インフラ工事を受注する企業はほぼ中国企業とみられ、日本企業が参加したとの情報は聞いていないとしている。

大型国家プロジェクトへの発注国の財政資金以外に、どういった資金支援が投入されるのか、プロジェクトの採算性や格付けといった情報も不明だとジェトロは説明する。企業にとっては、そうしたプロジェクト自体の不透明性が参入の壁となることもあり得ると予想している。

*見出しを修正しました。

(中川泉 梶本哲史 金子かおり 編集:田巻一彦)