1億人が読者対象なら
1%の100万部が最大で売れる。

――「もしドラ」といえば社内にプロジェクトチームをつくったんだよね? みんなでにぎやかにやっていた印象があるけど。

加藤 そうですね、刷り部数で10万部か20万部に行った頃だったと思います。とある人に「この本は100万部を狙えるかもしれないわね」と言われたんです。最初は「えっ」と思いました。ダイヤモンド社は97年の歴史がある会社ですが、100万部って一度も経験のない数字なんですよ。さらにその人は「100万部売るためには、まずあなたが会社のみんなに宣言して会社のみんなを巻き込んでいかなくちゃダメよ。あなたよりこの本を売りたい人はいないんだから、あなたが一番はじめにそのつもりにならなければはじまらないのよ」と言いました。

 びっくりしたのですが、同時になるほどそういうものかと思いました。

―― 何か思い当たるふしがあった?

加藤 10万部とか20万部とか売れる本をつくると、取材依頼の対応などで担当の編集者はとても忙しくなります。編集者がこういうことの対応を任せられている場合は、このあたりが限界になります。だからもし100万部売れるようにしようと思うと、もう僕一人の手には負えない。これは社内で組織的にやらないとダメだろうというのは想像できました。

 それと、前に著者の岩崎さんに「200万部」と言われて袖にしてしまいましたが、もし100万部を超えるとしたら、こういう本かもしれないという気も少しはありました。

――こういう本とは?

加藤 数年前に、100万部超える本ってどうやったら作れるんだろうって、過去のミリオンセラーを調べたことがあります。それでわかったのは、ミリオンセラーになった本のテーマは、青春、恋愛、家族、お金、健康の5つのうちのどれかか、あるいは複数をあわせもっているということです。これは、日本人のほぼ全員、1億人に関係あるテーマなんですよね。

 僕は本が売れる可能性って、潜在読者の1%くらいが最大だと思っています。普通のビジネス書は4000万人くらいのビジネスマンが相手だから、1%の40万部がだいたい最大の部数です。でも1億人の潜在読者がいれば100万部狙える。だから「もしドラ」にはその可能性がないこともないかなってほんの少しは思ってました。

――この前の話と違うね?

加藤 まあほんの少しですから(笑)。でも、わずかでも思っていたから、その言葉に僕はこれはやってみようと思ったんです。社内を巻き込むしかない、と。そして、ちょうどいいことにその具体的なやり方は「もしドラ」にちゃんと書いてあるわけですよ(笑)。