――具体的には?

加藤 たとえば、8月はスポーツ方面をがんばろうということになりました。たとえば学生の読書感想文コンテストや、高校野球関連での展開などです。夏の甲子園大会では、阪神電車の車両全面広告や、甲子園球場の階段上ポスター、フェンスなどにも看板を出しました。夏の甲子園って夏の風物詩になっていますが、意外と野球以外の新しいニュースがなくて、周辺ネタが求められてるんですよね。ですから、僕らの宣伝活動は、そういうことで多くのメディアに取り上げていただきました。

『もしドラ』(その3)<br />「あなたが100万部売ろうと思わないと始まらない」<br />と言われ、ハッとしました。本場甲子園でのPR。

――あれは面白かった!

加藤 それと、書店さんへの販促にも力を入れました。「もしドラ」のエプロンを作ったり、みなみちゃんの等身大人形をつくったり、定期的に書店さんにはグッズを送るようにしていましたが、アイデアはすべてチームから出てきたものです。

『もしドラ』(その3)<br />「あなたが100万部売ろうと思わないと始まらない」<br />と言われ、ハッとしました。しおりの箱の裏側。みなみちゃんから書店さんへの感謝の気持ちが。

 このしおりの箱を見てください。裏にほら、書店さんだけに見えるところに「たくさん売ってくださってありがとうございます!」ってみなみちゃんにお礼をいってもらいました。

 それと大きかったのが、著者の岩崎さんのご協力です。札幌から福岡まで全国の書店さんで講演会を実施してくださいましたし、メディアへの取材も忙しいなかほとんど受けてくださいました。こういうプロジェクトは著者さんの協力なしには実現しません。

――随分、話題づくりに力を入れたようだが。

加藤 そうですね。そもそも話題になりやすい内容でしたし。ちょうど電子書籍も4月に発売して、これも話題性もあり、随分口コミを広めるのに役立ったと思います。

――100万部に到達したのは、7月。

加藤 プロジェクトチームができてからはあっと言う間でした。運もかなりよかったと思います。ちょうど話題が切れたころに、テレビで紹介されるといった幸運も続きます。関西では7月に「ビーバップ!ハイヒール」という番組で1時間、取り上げていただきました。これは西日本の売り上げにすごく貢献しています。

 その後、一気に100万部に到達しました。100万部に届いた頃には、チームの人も「やった」という感覚よりも「次は200万部だ」というモードの方が大きかったようです。チームの力って凄いですよね。

*目指した100万部に到達しても勢いが止まらない。サクセスストーリーはどんな話も聞いていて楽しいものです。話す加藤君もイキイキしている。次回は最終回、これまでを振り返ってマーケティング戦略を体系的に語ってもらいます。