Luciana Lopez

[ニューヨーク 23日 ロイター] - トランプ大統領は先月末、ホワイトハウスのルーズベルト・ルームに集まった製造業者たちを前に、大規模なインフラ整備計画がまもなくスタートすると確約した。

大統領は今年には「実現させる」と語ったと、この会合に出席したマーリン・スティール(ボルチモア州)のドリュー・グリーンブラット社長は述べた。「非公開会合で、大統領が最初に言ったのは、実はこのことだった」と同氏は語った。

だが、1兆ドル(約111兆円)規模のインフラ整備計画を成功させるのは、口で言うほどたやすいことではない。政権に提案されているいくつかのプロジェクトがそれを裏付けている。

北米建設労働組合連合と政権移行を支援した外部のデベロッパーが提出したプロジェクトのリストには、いずれもインフラ建設企業が着工「準備完了」と称する複数のプロジェクトが含まれている。

だが「準備完了」とは言っても、さまざまな理由により、必ずしも実際にプロジェクトが開始できるとは限らない。したがって、プロジェクトの開始を急ぎ、雇用を生み出し、経済に刺激を与えようといくら努力しても、トランプ大統領の約束する10カ年・1兆ドル規模のインフラ整備プロジェクトは遅々として進まない可能性がある。

北米建設労働組合(NABTU)は、1月23日にショーン・マクガービー会長がトランプ大統領に面会した後、同組合は橋梁、パイプライン、水道など計26件のプロジェクトのリストを提出。政権移行を支援したオハイオ州のデベロッパー、ダン・スレイン氏がまとめたもう1つのリストには、内陸水路や港湾からFBIの新本部に至るまで、あらゆる分野のプロジェクト51件が含まれている。

トランプ氏自身の計画は内容に乏しいが、政権幹部は、長時間を要する許認可プロセスを短縮する方法を模索していると話している。

大統領自身の計画は詳細に欠けるが、米政権幹部は、長時間を要する許認可プロセスを短縮する方法を模索していると話している。

「現行のシステムでは先が見えない」と同幹部は語る。

スレイン氏、NABTUのがともに支持しており、双方のリストに掲載されているプロジェクトは9件ある。そのうち7件はまだ着工されておらず、1件は予備的な工事が始まったにすぎない。インフラ整備プロジェクトをトランプ氏が望むようなスピード感で着手することの難しさを物語っている。

「プロジェクトが『準備万端』とされていても、実際にすぐに着工される例はめったにない」と語るのは、リストの双方に関係している2つの企業で社長と経営最高責任者(CEO)を務めるビル・ミラー氏。 

チョークチェリー/シエラマドレ風力発電所の建設に携わるパワー・カンパニー・オブ・ワイオミングと、ワイオミング、コロラド、ユタ、ネバダの4州にまたがるトランスウエスト・エクスプレス送電プロジェクトを開発するトランスウエスト・エクスプレスの2社だ。

政府保有地の一角に建設されているチョークベリー/シエラマドレ風力発電所は、最近になって工事が開始されるまでに8年の歳月と数千万ドルの資金を要した。ミラー氏によれば、トランスウエスト・エクスプレス送電プロジェクトに関しては、依然として州レベルの認可を数件待っているところだという。

「『準備完了』状態にするには、信じられないくらいの費用と時間を使う」とミラー氏は言葉を添える。

トランプ政権は着工に至るプロセスを迅速化したいと述べている。だが、そのプロセスの一部は、州レベルの認可のように、大統領の裁量範囲を超えている。

「大統領のインフラ整備計画の大半は、規制や認可の合理化によって実行可能なすべてのプロジェクトを迅速に推進させることに重きを置いている」とホワイトハウスの報道官の1人は語る。「こうした改革は個別プロジェクトが直面する障壁に対応するというより、プロセス全体における確実性を高めるものだ」

<頓挫した海水淡水化プロジェクト>

水道関連インフラ開発事業者ポセイドン・ウォーターが提案した、カリフォルニア州ハンチントンビーチに海水脱塩プラントを建設する計画の遅延は、利害の対立と規制によって、いかにプロジェクトが頓挫するかを示す格好の例だ。

ハンチントンビーチのプロジェクトマネジャーを務めるポセイドンのスコット・マローニ副社長によれば、オレンジ・カウンティに飲料水を供給する海水脱塩プラントの構想を最初に提案したのは1990年代末。2000年代初めには認可取得に向けたプロセスが開始した。

ハンチントンビーチ市は2006年2月に同プロジェクトを承認していた。だがポセイドンは、それ以外にも複数の州機関から24もの許可を得る必要があった。たとえば、プラントには環境保護庁が全国的に義務づけている汚染物質排出防止システムが装備されるが、これについてサンタアナ地域水質管理委員会の認可が必要だった。

プロジェクト建設事業者であるポセイドンは、2006年に地元からの承認を得たことにより、カリフォルニア州海岸管理委員会に申請を行う資格を得た。

プロジェクトが進展するなかで、この申請は数年のあいだに何回か修正された。たとえば、州が冷却目的で海水を使用する発電所の段階的削減を始めたことで、プラントは設計を変更せざるをえなくなった。ポセイドンでは、発電所から排出される冷却水を脱塩する計画を立てていたが、代わりに海洋から直接海水を採取するよう設計を変更した。

2013年、ポセイドンは許可申請を取り下げた。州海岸管理委員会が同社に対し、当該水域の魚介類の幼生に対する事業の影響に関する懸念を調査するよう指示したことが理由である。

申請は2015年に再提出されたが、2016年9月に再び取り下げられた。海岸管理委員会から、州水質管理委員会が2015年に新たに制定した脱塩プラントに対する規則に同社の計画が適合していることの証明を求められたためだ。

これによってポセイドンは、プラントの海水採取と排水技術の設計を修正しなければならなかった。

プロジェクトは、さらに3件の承認を得なければならない。州土地委員会、サンタアナ地域水質管理委員会、カリフォルニア海岸管理委員会からの認可だ。

ポセイドンは、まもなく最後の認可を得られるとの自信があると語る。とはいえ、マローニ氏によれば、それでも2018年第2四半期までは建設は開始されない可能性があるという。

環境保護団体による反対は止んでいない。

ポセイドンの脱塩プラントについて、「決着済みとはとうてい言えない」とサーフライダー・ファウンデーションのカリフォルニア州担当政策コーディネーター、マンディ・サケット氏は語る。

同プラントは不必要かつ高コストであり、多大なエネルギーを消費し、海洋の生命を危険にさらすと主張するこの団体は、今後もこのプロジェクトに対する戦いを続けていくという。

「市民からの意見聴取や規制面での重要な検証など、まだいくつかの機会は残っている」とサケット氏は言う。

(翻訳:エァクレーレン)